生活保護費判決 減額の手法に違和感

2020年7月3日 07時42分
 生活保護費引き下げは、生存権を保障する憲法に違反するとして受給者が国などに取り消しを求めた集団訴訟の初判決で、名古屋地裁は訴えを退けた。だが、減額の仕方に分かりにくさは否めない。
 東京、大阪、静岡、津、富山など全国二十九地裁で約千人の受給者が同様の訴訟を起こしている。
 国は物価下落などを理由に、二〇一三年から三回に分け、生活保護費のうち、食料や光熱費に充てる生活扶助費を平均6・5%、最大10%(年額六百七十億円)引き下げた。「10%引き下げ」は、自民党が政権復帰した一二年衆院選での公約だった。
 厚労省は、この引き下げの基準に総務省の「消費者物価指数」(CPI)を初めて用いた。〇八年から一一年までのCPIは、総務省や世界各国が使う「ラスパイレス方式」で計算すると2・26%下落だが、厚労省は別の方式との併用で4・78%下落と算出した。
 原告は「恣意(しい)的な計算方式で、引き下げ額は過大だった」と訴えたものの、判決は国の主張に沿い「計算方式は厚労相の裁量権を逸脱していない」と述べて請求を棄却した。下落幅を大きめにみる算定に、自民党公約への厚労省の「忖度(そんたく)」はなかったのだろうか。
 原告側は「国は専門部会に諮らず削減を決めた」とも主張したが判決は「専門家の検証はなかったものの厚労相の判断に誤りや欠落はない」と退けた。
 判決はまた「当時の国民感情も踏まえた厚労相の判断を違法とは言えない」と述べた。具体的な中身を示していないが、一部の不正受給への世論のバッシングをもって「国民感情」としたとすれば、短絡的ではないか。
 憲法二五条は「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定める。この精神を受け「車や家、貯金がない」「働けない」など諸条件を満たせば生活保護の申請ができる。
 厚労省によると、制度利用者は今年四月現在で約二百六万人。同月の申請は二万一千件余で前年同月比約25%増。コロナ禍で雇用が悪化した影響とみられる。
 「体が不自由で職に就けない」「一日二食でしのいでいる」「不織布マスクは高くて買えない」「電気代がかさみ、エアコン使用を控えている」−。いずれも受給者の訴えだ。減額の幅が広がれば、このぎりぎりの生活は影響を受けるだろう。他の地裁でも判決に向けて審理が続く。弱者の暮らしを直視した判断を望みたい。

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