年金運用赤字、4半期最大の17・7兆円 1~3月期 コロナ株安が直撃

2020年7月4日 06時00分
 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は3日、2019年度の運用結果を公表した。このうち20年1~3月期の運用は4半期ベースで過去最悪となる17兆7072億円の損失だった。年度を通しても8兆2831億円の赤字で、過去2番目の損失額となった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界的な株安が響いた。

 20年1~3月期の投資先で最も損失が大きかったのは、外国株式の10兆2231億円。国内株式は7兆4185億円の赤字だった。4半期ベースのこれまでの最大損失額は、米中貿易摩擦による世界的株安が起きた18年10~12月期の14兆8038億円。
 GPIFは14年10月、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の一環として、運用先に占める株式投資の割合を24%から50%に拡大した。
 GPIFの宮園雅敬理事長は3日の記者会見で、今回の損失について「株式比率を高めたことが収支の振れ幅を高めることにつながったのは事実」と認めた。株価が日米とも3月末から6月末までに上昇したことを踏まえ「一喜一憂せず、長期目線で運用したい」と話した。
 前身の組織時を含めて、GPIFが市場での運用を始めた01年度以降の累積の資産増加額は、今回の損失を含めても57兆5377億円のプラス。19年度末の運用資産額は150兆6332億円。
 積立金は保険料を払う現役世代の減少に伴い、50年後ごろから計画的に取り崩し、年金給付の1割程度の財源に充てる。

◆首相は投資リスク説明を


 年金積立金の運用を巡っては、安倍晋三首相(自民党総裁)が昨年7月の参院選で、安倍政権で計53兆円の収益を上げ「民主党政権時代の13倍」と強調した経緯がある。
 53兆円は、第2次政権が発足した2012年12月末を含む12年10~12月期から19年1~3月期までの損益の合計だ。
 今回の発表は、その後1年間の実績。これを反映すると、第2次安倍政権での運用益は45兆円に減る。
 GPIFが14年10月、アベノミクスの一環として運用先に占める株式投資の割合を倍増後、運用資産額は増加傾向にある。半面、15年7~9月期に4半期ベースで当時最大だった7兆8000億円の損失を出し、その後も最大赤字額を今回を含め2度更新した。
 こうした「振れ幅」の大きさは、会計検査院が19年4月、年金積立金の運用に関する調査報告書で指摘した。報告書は株式投資の拡大に関し「GPIFは収益が減少するリスクについて国民に丁寧に説明する必要がある」と記した。
 説明責任は首相にも求められる。選挙で運用益を誇るだけでなく、アベノミクスに伴う株式投資の拡大により、積立金を損なうリスクがあることも率直に認めるべきだ。(新開浩) 

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)  厚生年金や国民年金の保険料収入の余った分を積立金として管理し、市場に投資して運用する。厚生労働省の所管。前身の年金資金運用基金を衣替えして2006年に設立された。少子高齢化の影響で保険料を払う現役世代が減少することに備え、長期的な運用で将来の年金給付を確保している。17年10月、理事長への権限集中を避けるため、資産構成割合などの重要事項について意思決定したり、執行部の業務を監督したりする経営委員会が設置された。

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