<7月の窓>父子自転車旅の続きは

2020年7月4日 06時00分
 シングルファーザーの恩田茂夫さん(55)=東京都板橋区=は12年前の夏、小学4年だった娘の春音さん(21)を能登半島一周の自転車旅行に連れ出した。不登校だった娘に「学校へ行かないことで自信を失ってほしくなかった」。
 2人は以来、毎夏に日本各地を自転車で旅した。昨年は奈良や大阪、神戸など約300キロを走って総走行距離は5800キロに。春音さんは中学から不登校でなくなり、今春、大学4年になった。
 茂夫さんは毎年、道中の出来事やコースを載せた旅行記を冊子にまとめてきた。写真を貼り、2人の顔のイラストを入れて思い出を書き込む。
 ここ6年は日常の忙しさでストップしていたが、コロナの影響で休職となり、残りの旅行記作りに取り組んだ。
 「忘れているかもと思うと怖かった」。だが、娘と旅した記憶は薄れていなかった。
 高校2年のときは関東や中部の1都7県約900キロを走破した。茂夫さんが高校時代に走ったのと同じコースで、道を間違えたり、娘の自転車がパンクしたり。
 日程の変更や交通機関の利用を提案すると、娘は「それじゃ意味がない。お父さんは全部走ったんでしょ。私だってやるわ」。思い出して涙がこみ上げてきた。
 今年は就活や勉強に忙しい春音さんは自転車旅行の「卒業」も考えてきた。でも、12冊になった旅行記を前にうれしそうな父を見ると、「ずっと頑張ってきたことだから」と心が揺れる。「とりあえず体力をつけよう」。そう思って走り込みを始めた。(中村真暁)

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