それでも世界に遅れ 脱炭素化、遠く 石炭火力6割維持

2020年7月4日 06時00分
 地球温暖化につながる二酸化炭素の排出削減に向け、政府は2030年度までに石炭火力発電の縮小へ動きだす。旧型で排出量が多い非効率な約100基を休廃止するものの、設備容量(最大出力)でみると石炭火力の6割強は残る。石炭依存は続き、世界的な「脱炭素」の潮流の中で、日本が取り残される懸念は消えない。(石川智規、渡辺聖子、小川慎一)

 ◆演出

 「あまり言い訳せずに、やれることはやっていきましょうや、ということ」。梶山弘志経済産業相は7月3日の記者会見で、石炭火力休廃止の意義を語った。
 経産省は、日本の資源の乏しさを理由に、安価な石炭を用いた石炭火力発電の存在を重視してきた。昨年の国連気候行動サミットで「脱炭素化」の流れが加速して以降も、電力コストの上昇を避けたい産業界の意向を背景に、「重要なベースロード(基幹)電源」との姿勢を崩さずにいた。
 発表前夜の2日、梶山氏と電力各社トップとの定例会談では、自由討議が予定を約1時間超えた。ある大手電力の広報担当者は「寝耳に水」と突然の方針転換に驚く。
 小泉進次郎環境相も3日の会見で「梶山大臣のリーダーシップだ。がんじがらめのエネルギー政策に風穴をあける」と持ち上げた。

 ◆数字


 「方針転換じゃない。既存の方針を強めに言っただけだ」と、国の第5次エネルギー基本計画の策定に関わった国際大の橘川武郎教授(エネルギー産業論)は話す。非効率な石炭火力を減らし、高効率化を進めることは、2年前にまとまった第5次基本計画に明記されている。
 国内の発電総量(18年度)の32%を占める石炭火力発電所は計140基。うち非効率な設備は114基で、発電量からみると半分程度だ。この114基の9割に当たる約100基が休廃止の対象とされるが、ほとんどは規模が小さい。これに対し、高効率な発電所は大型のため、基数が少なくても設備容量が大きい。
 神戸大の島村健教授(環境法)の試算では、30年度までに建設計画を含めた高効率な発電所が稼働すると、たとえ100基を休廃止しても、設備容量では4割弱の削減にとどまる。

 ◆余地


 26%-。政府が見込む、30年度総発電量に占める石炭火力の割合だ。「休廃止で20%ぐらいになるインパクトはある」と橘川教授。ただ、25年までに石炭火力ゼロを目指す英国など欧州諸国と比べると見劣りする。
 同じく基本計画にかかわった東京大の松村敏弘教授(産業組織論)は「石炭火力をつくり続ける免罪符にならないか。高効率といっても、天然ガスよりも二酸化炭素を出す。ガスでさえ疑問が持たれている局面なのに」といぶかしがる。
 26%は、原発が20%程度を占めることを前提にしている。ただ、東京電力福島第一原発事故以降、原発の再稼働は進まず、大手電力幹部は「20%なんて不可能だ」と突き放す。
 再生可能エネルギーが大きく伸びない限り、石炭依存は避けられず、実際には26%達成も危うさが残る。環境保護団体・気候ネットワークの平田仁子理事は「他の先進国は石炭火力をゼロにしなければという危機感がある。政府は批判をかわす一歩を踏み出したが、必要なレベルのかじを切っていない」と話した。

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