美術館って、おもしろい! モラヴィア美術館著

2020年7月5日 07時00分

◆展覧会の裏側 生き生きと
[評]山梨俊夫(国立国際美術館館長)

 長い間美術館で働いてきた評者にとっても、この本の題名通り『美術館って、おもしろい!』。いつも新鮮で、飽きることがない。けれども、働いている人間がただおもしろいと言うだけでは、おもしろさの中身は伝わらない。
 美術館を訪れる人の目的はいろいろある。展示会会場、講堂、レストラン、ショップ、庭園などいくつも施設を備えているから、訪れる人は自分の楽しみ方を工夫できる。良質の美術との出会いに加え、それぞれの楽しみ方がある。それが、美術館は面白いという最大の理由となるだろう。それでも例えば、展覧会はどうやってできるのかを知っている人はまずいない。
 美術館は普段の活動の仕組みを見せない。見せたくないのではなく、見せる機会がない。多くの職種に携わる人々に支えられたその仕組みがわかると、なるほどと腑(ふ)に落ちる。美術館の隠れた姿が見えてきてますます面白くなる。
 この本は、西洋の美術館の歴史、日々の活動の舞台裏、展覧会ができるまでを三つの柱にしている。そのすべてで、文章よりも彩り豊かなイラストが主役になっている。解説も専門用語を連ねることなく、平易で分かりやすい。とくに日々の活動と展覧会のつくり方については、丁寧で漏れがない。美術館職員は誰も、自分の仕事に自信をもって表情豊かに描かれている。
 子供も大人も一緒に楽しめるこの上質な絵本をまとめたのが、チェコ共和国のモラヴィア美術館で働く学芸員が中心だと知れば、丁寧なのもうなずける。歴史を除けば、チェコも日本も美術館はほとんど変わらない。
 自分たちのコレクションを大切にして、地域の人々に親しまれ、遠くからの来館者にも魅力的な美術館にするために働く、裏方の楽しげな姿が生き生きと伝えられる。
 美術館って、一体どんなふうに動いているのだろうと思う人は、ぜひこの本を手に取ってみるといい。美術館の楽しみ方が増すこと、請け合いである。評者も、日本の美術館の隠れた顔を見てもらいたいとつくづく思う。
(阿部賢一・須藤輝彦訳、河出書房新社 ・ 3520円)
チェコで第2の規模を誇る美術館。本書はボローニャ・ラガッツィ賞「アートの本」特別賞を受賞。

◆もう1冊

藤森照信×山口晃著『探検! 東京国立博物館』(淡交社)

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