「愛の不時着」の人々
2020年7月6日 07時08分
中国で勤務していた時、月に一回のペースで中朝国境を訪れた。列車を乗り継ぎ、さらにタクシーやバスで何時間もかかる。
それでも、現地に行くと目の前に北朝鮮の村が広がり、人々の日常生活が見て取れた。
道路は舗装されておらず、牛車が行き来している。国境を流れる川では、女性たちが服を棒でたたいて洗濯をし、その洗濯物を川べりの岩に張り付けて干していた。
中国側に出てきた北朝鮮の人たちとも、出会った。何とか川の向こうにも行って、話を聞いてみたいと思ったものだ。
それだけに、この韓流ドラマには引き込まれた。インターネット上で配信され、日本でも大ヒット中の「愛の不時着」だ。
パラグライダーの事故で北朝鮮に不時着した韓国の財閥の娘と北朝鮮のエリート軍人が恋に落ちる、という思い切った設定。
私が遠くから眺めた人々の生活ぶりが、リアルに描かれていた。脱北者からの聞き取りを基に、丁寧に再現したという。
女性たちはやはり、棒を使って洗濯をしていた。経済を回している市場の様子や、韓国のドラマにはまっている軍人も登場する。
なにより北朝鮮の人たちの純朴さが描かれていた。私が国境地帯で感じたことでもあった。脚色もあるだろうが、核、ミサイルだけではなく、ごく普通の北朝鮮について、もっと知るべきだと実感した。 (五味洋治)
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