コロナ選挙「現職有利に」 感染対策で存在感 新人は浸透に高い壁

2020年7月7日 05時50分
 
 東京都知事選で再選された小池百合子氏は、新型コロナウイルス感染防止のために人の密集を避けるとして、街頭での選挙活動を一切しなかった。3月以降、コロナ対応が自治体の首長の最重要課題となる中、現職が選挙活動より公務を優先させるケースが目立っている。首長選の多くが、現職のコロナ対応に対する実績評価の様相を帯びた。識者は「コロナ禍が新人には浸透の壁になり、現職有利に働いた」と分析する。(清水俊介、横山大輔)

 ◆様変わりした選挙の風景

 総務省が各都道府県の選挙管理委員会に、地方選におけるコロナ感染防止対策の徹底を初めて呼び掛けたのが2月26日。それ以降、知事選は熊本と東京、東京23区長選は目黒区と港区、市長選は全国55市で行われた。市長選のうち19は無投票で、36市が選挙戦になった。
 感染防止の観点から、選挙の風景は様変わりした。当たり前だった候補者と有権者の握手はほとんど見られなくなった。多くの陣営が人の密集を避けるため、集会や街頭演説を控えた。
 一方で、インターネットや会員制交流サイト(SNS)を通じ、自身の政策や考えを訴えることが一般的な戦術になった。都知事選のある候補者は「『選挙運動は午後8時まで』が常識だったが、ネット発信があるので、24時間選挙活動をしている感じだ」と本紙に打ち明けた。ネットを通じた選挙活動が中心となり、有権者と距離を取る「リモート・デモクラシー元年」とも呼ばれる。

 ◆街頭に立たない現職候補

 有権者との接触を減らさざるを得ない状況の中、現職はコロナ対応を理由に、街頭に立たないケースが目立った。小池氏は街頭には一切立たず、オンライン動画の配信で政策を訴えた。4月の目黒区長選、6月の港区長選でも現職が街頭演説を自粛し、有権者を集める選挙活動を控えた。
 コロナ対応を理由に現職が選挙運動を全面的に控えた最初の例は、3月の熊本県知事選だ。蒲島郁夫知事は街頭には立たず、選挙カーも走らせなかった。蒲島氏は選挙期間中、本紙の取材に「選挙運動をしないのは不安だし、不利だが、現職は実績が評価される。有権者は現職の実績を評価する十分な情報を持っている」と言い切った。

 ◆投票率低下が鮮明に

 3月以降、選挙戦となった40の知事選、市区長選のうち、現職が出馬したのは35。このうち、現職が当選した選挙は25、勝率は71・4%に上る。首長選はもともと現職優位とされ、コロナ禍がどの程度影響したのかは、にわかには明らかではない。
 明確になったのは投票率の低下だ。40の知事選、市区長選のうち、42・5%に当たる17の選挙で投票率は過去最低だった。一般に投票率が下がると現職に有利とされ、結果に影響を及ぼした可能性もある。
 リモート・デモクラシーの功罪を研究する法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は「街頭で有権者と触れ合う従来型の選挙ができないことは新人には痛い。投票率が下がった上に、有権者の関心が直近のコロナ対応にばかり向かえば、コロナに立ち向かう現職の仕事ぶりだけが好意的に見られるという極めて現職有利な状況がつくられる」と語った。

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