熊本豪雨 治水は「合わせ技」で

2020年7月7日 07時42分

 九州南部の豪雨では一級河川の球磨川が決壊し、熊本県で多くの犠牲者を出した。これから台風シーズンだ。被害を防ぐためには、ハード、ソフト両面で、知恵を絞らねばならない。
 明治以来、治水の基本はダムと堤防であり、水を河道の中に治めることに力を入れてきた。治水工事をすればするほど、流域の水は河川に集中し、流量は増加する。近年の頻繁な豪雨はそれに拍車をかけ、毎年のように大きな水害が発生している。
 ダムや巨大堤防などのハードを新たに建設すると、長い工期と多額の費用、それに地元の犠牲や環境への大きな負荷など、マイナスの要素が多い。
 そのため既存のものを活用して対応しなくてはならないのだが、現状ではそれも不十分だ。
 例えば今回、急激な豪雨だったこともあり、球磨川のダムでは小規模な「予備放流」は行われたが「事前放流」は見送られた。
 事前放流でダムの水をある程度流し、ダムの容量を増やしておけば、今回の豪雨でも流量を多少なりとも減らすことができ、堤防の決壊も避けられた可能性はある。
 ダムの満水に伴う「緊急放流」には至らなかったが、堤防決壊はなぜ避けられなかったのか。
 事前放流には水を利用する地元自治体などとの調整や、信頼できる降水量の予測が必要となる。
 今回の豪雨に当たり、何が不足していたかを検証して、今後に生かさねばならない。
 既存ダムは土砂がたまり貯水能力が下がるとはいえ、堤体かさ上げなど再生策はある。費用対効果の高い洪水対策を追求すべきだ。
 避難ルートの整備や洪水情報の周知などソフト面の課題もある。
 多くの死者を出した球磨村の高齢者施設は、川沿いの危険な場所にあった。避難訓練はしていたというが、特別警報の発表から十分な時間がなかったこともあり、避難が間に合わなかった。
 二〇一六年には岩手県の山間部の川沿いで、高齢者のグループホームが洪水に襲われて九人が死亡した。そうした過去の教訓は結果として生かされなかった。
 地球温暖化の進行に伴い、短時間での豪雨発生が増え、猛烈な台風が増えるともいわれている。
 水害は日本全国、どこでも起こり得る。精密な降水量の予測、洪水発生を考慮した土地利用の転換など、課題は山積している。土木工事だけではなく、合わせ技の治水を進めなくてはならない。

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