イージス・アショアは配備断念…辺野古新基地の行方は? 中谷元・渡辺周両衆院議員に聞く

2020年7月7日 10時28分
 政府が地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備を断念したことを受け、同じく多額の予算と完成までの長い年月が見込まれる沖縄県名護市辺野古へのこの新基地建設を継続すべきかについても注目が集まっている。与野党の防衛相、副大臣経験者に今後の辺野古政策のあり方についてそれぞれ聞いたところ、いずれも現行計画を見直すべきだと主張した。 (聞き手・山口哲人、坂田奈央)

◆辺野古を軍民共用の飛行場に 中谷元・元防衛相

普天間基地の移転について話す中谷元・元防衛相=いずれも東京・永田町の衆院第2議員会館で


 ―県民投票などからも明らかだが、県民の反対が強い辺野古新基地建設を今後どうすべきか。
 「政府と沖縄県が向き合って話し合いをすることが大事だ。辺野古を軍民共用の飛行場にすると提案すれば、県側にも理解してもらえるのではないか。県北部の振興や発展のために飛行場建設は地元からの強い要望がある。せっかく今後15年以上と1兆円近くの予算をかけて飛行場を造るのであれば、自衛隊も使えるようにしたら良い。投資効果もあるし、地域の安全と安心にもつながる」
 ―現計画では滑走路が1800メートルと固定翼機が安全に離着陸するには短いとの指摘があるが。
 「民間の飛行場は2000メートル以上の滑走路が必要なので、設計を再変更して工事申請を出し直し、沖縄県に認めてもらえれば、現在の見通しよりも早く完成するのではないか」
 ―現計画よりも規模を拡大するということか。
 「そうだ。以前の計画では軍民共用ということで合意されていたので、そのような設計は可能だと思う」
 ―民間や自衛隊との共用であっても、辺野古の埋め立てには反対が強いが。
 「朝鮮半島や中国、南シナ海などで有事が起きた際、真っ先に活動する米海兵隊が地理的に沖縄に駐留していることが地域の安定のために必要だ。辺野古はてん飛行場の唯一の移設先というのが私の考えだ。日本の安全保障のため、米軍の機能は維持し、自衛隊も体制強化する時期にある」
 ―政府が地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を断念した。
 「河野太郎防衛相の決断を高く評価している。近年、ミサイルの飛び方が進歩しており、弾道ミサイル防衛だけでは対処できなくなっている。特に北朝鮮は、新型ミサイルの発射実験を繰り返して精度を上げていることに加え、移動式発射台から撃ったりと形態も変化している。ロシアや中国も地上イージスでは対処できない極超音速滑空弾などを多数保有している」
 ―既に約1800億円の契約を結んでいるが。
 「これまでの経費をいかし、レーダーについては既に別のレーダーがある新潟・佐渡や長崎・対馬、鹿児島・こしき島などへの配備も1案だ。周囲に人がおらず電波による住民への問題も起きない。イージス艦を新造して搭載しても良い」
 ―これからのミサイル防衛のあり方は。
 「地上イージス断念は次世代の防衛体制構築のチャンスだ。策源地攻撃能力(敵基地攻撃能力)を備えた長射程ミサイルやレーザー兵器などの研究と早期導入を進めなければならない」
 ―敵基地攻撃能力保有は周辺国からの反発も強い。
 「撃たれたミサイルを単に迎撃するだけの拒否的な抑止力よりは、相手が撃ったらこちらも撃つぞという懲罰的な能力を持つことが大事だ。その方が相手も撃たなくなる」

 なかたに・げん 1957年生まれ。2001年、防衛大卒の陸上自衛官出身者で初の防衛庁長官に就任。14~16年に防衛相を務めた。

◆日米両政府で妥当性見直しを 渡辺周・元防衛副大臣

沖縄の基地問題について話す国民民主党の渡辺周衆院議員


 ―政府は新型コロナウイルスの影響で中断していた新基地建設を、6月の沖縄県議選後に再開した。
 「辺野古の埋め立て予定海域の海底で軟弱地盤が見つかり、防衛省が主張する2030年代の完成は疑わしい。このまま続ければどんどん建設費も膨らんでいくし、仮に完成しても地盤沈下が起きて『無用の長物』になり、1兆円近くが無駄になる。まずは工事を停止すべきだ」
 ―埋め立てが進んでいる軟弱地盤以外の部分はどうするか。
 「日米両政府に、利害関係者の沖縄県と名護市を加えて四者で新しい協議体をつくって議論するのが良い。地元の意向を尊重することが重要だ」
 ―政府は新基地が完成しなければ米軍普天間飛行場(宜野ぎのわん市)が返還されないとの立場だが。
 「米国も政権交代する可能性があり、米政府の今後の方針を見極めながら日米両政府でもう1度検討し直すことが必要だ。普天間飛行場の米海兵隊を辺野古に移すという検討が始まったのは四半世紀も前のことだ。今後の安全保障環境を見据えて妥当なのか考え直さなければならない」
 ―新基地建設以外の代替策は。
 「米空軍嘉手納かでな基地に普天間飛行場の機能を持ち込むのがベストだと民主党政権時に考えたが、地元の嘉手納町などが反対した。ただ、嘉手納への統合であれば新しく基地を建設しなくて済むので、可能性をもう1度検討すべきだと思う」
 ―政府が地上イージスの配備計画を断念した。
 「当然の帰結だ。このまま配備されるとしても27年ごろだろうが、その時には脅威の質は変わっている。政府は朝鮮半島からの弾道ミサイルを想定して秋田、山口両県への配備を進めたが、北朝鮮も技術を進歩させており、潜水艦で太平洋から弾道ミサイルを撃つかもしれない。安倍政権が、地上イージスが日本の防衛に本当に役立つと考えていたのか疑問だ」
 ―自民党では敵基地攻撃能力保有の是非の議論を始めた。
 「専守防衛の観点から地上イージスを導入するという話だった。二足飛びで敵基地攻撃能力の議論になるのは安倍晋三首相の単なる争点ぼかしではないか。こういう問題が地上イージス断念やコロナ禍のどさくさに紛れて出されるのは、非常に危険だ」
 ―地上イージスに代わるミサイル防衛をどうすべきか。
 「極超音速滑空弾などミサイルが日進月歩で進化している中、それを察知して撃ち落とすのにはいくら予算があっても足りない。対策を講じても突破するミサイルが開発される。血を流さずに最も効率的に相手を無力化させることに重きを置き、サイバーや衛星を駆使して相手の能力や通信をまひさせる抑止力を検討しなければならない」

 わたなべ・しゅう 1961年生まれ。早大卒で新聞記者、静岡県議を経て2011年、防衛副大臣に就任。現在は国民民主党副代表。

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