「威圧的」動画がデモに発展…トルコ国籍の男性への職務質問は適切だったのか<取材ファイル>

2020年7月7日 13時55分
東京・渋谷でデモ行進する外国人ら。参加者は米国の黒人男性暴行死事件や、日本でトルコ国籍の男性が警察官から不当な職務質問を受けたとして抗議の声を上げた=5月30日(共同)

東京・渋谷でデモ行進する外国人ら。参加者は米国の黒人男性暴行死事件や、日本でトルコ国籍の男性が警察官から不当な職務質問を受けたとして抗議の声を上げた=5月30日(共同)

  • 東京・渋谷でデモ行進する外国人ら。参加者は米国の黒人男性暴行死事件や、日本でトルコ国籍の男性が警察官から不当な職務質問を受けたとして抗議の声を上げた=5月30日(共同)
  • トルコ国籍の男性への職務質問を巡り、渋谷署前の路上に集まって抗議する市民たちと、警察署の周囲を囲んで警戒する署員=5月30日(淡路久喜撮影)
 今年5月、東京都中野区のトルコ国籍の男性(33)に対する警視庁渋谷署員の職務質問が「威圧的だ」として、渋谷周辺でのデモに発展した。職務質問の様子を撮影した動画が会員制交流サイト(SNS)に投稿されたことが、デモのきっかけだった。職務質問は適切だったのか。現場を歩き、双方を取材した。 (木原育子)
 警視庁が署員から聞き取った報告書によると、5月22日夕、JR恵比寿駅近くの駒沢通り(渋谷区東3)をパトカーでパトロール中、男性の運転する車がウインカーを出さずに左折した。「警察官と目が合い、焦った様子」と判断し、車を停車させた。
 男性は「ウインカーを出した」と主張。職務質問を断り、車を発進させた。署員はこの行為を「逃走した」と判断し、パトカーで70メートル追跡。男性は再び車を止め、道路中央の植え込み部分に立った。
 SNSに投稿された動画は、その後の場面から始まる。男性は「触らないで!何もしてないじゃん」と主張。警察官が抵抗する男性に足をかけて道路にひざまずかせた。「いいかげんにしろ。なめんなよ」。警察官の怒声が響いた。動画は、男性の車に同乗していた男性の知人や、近くを通りかかった人たちが撮影していた。
 この2日前、東京都大田区で職務質問中に逃げた女の車が、女性をはねて死亡させる事件が発生し、警視庁は警戒を強めていた。
 「現場の警察官はままごとをしているわけではない。犯罪に至る前に職務質問で不審点を解明しようと、せめぎ合いをする」と警視庁幹部は語気を強める。その上で「だとしても『なめんなよ』は余分。冷静な対応が必要だった」と話す。
 これに対し、男性は「薬物犯罪と決め付けているようだった」と不信感を隠さない。男性は暴力的な職務質問で精神的苦痛を受けたとして6月30日、都と警視庁に対し、慰謝料500万円の国家賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
 職務質問のあり方を規定する警察官職務執行法では、警察官は犯罪の疑いが晴れるまで質問できると定めるが、市民が職務質問に応じるかはあくまでも任意だ。このため、職務質問を巡っては双方の見解が大きく食い違うケースが出てくる。
 男性の訴訟の記録によると、男性への職務質問は30分ほど行われたとされるが、SNSで確認できるのは、そのうちのごく一部でしかない。「切り取られた事実」の前後の状況を知りたいと1カ月余、取材を重ねたが、核心に迫る情報を得られなかった。ただ、事実に迫ろうと取材を尽くすことは、警察担当記者として、とても大切な仕事だと思える。

 職務質問 警察官職務執行法2条1項で規定。対象は罪を犯し、または犯そうとしていると疑われるだけの異常な挙動など相当な理由のある者、または犯罪について知っていると認められる者と定める。警察が職務質問から無理やり警察署に連行したことなどが問題になり、最高裁で違法捜査と認定された判例もある。

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