高齢者 必要な支援明確に 愛知・安城の町内会が取り組み 日常の充実度、個々に評価 

2020年7月8日 07時20分
 新型コロナウイルスの影響で暮らしが大きく変わる中、孤立しがちな高齢者を地域でどう支えるかが課題になっている。感染拡大を防ぐため、大勢で集まったり、自宅を訪ねたりが難しくなっているためだ。そうした中、愛知県安城市の町内会は、高齢者の日常の充実度を「健康」や「収入」といった項目ごとに数値化する手法を導入。普段から誰が、どんな支援を必要としているかの把握に役立てる。 (四方さつき)
 新しい試みを始めたのは約五百軒からなる城南町内会だ。二〇〇七年から二十〜三十軒ごとに、名付けて「世話焼きさん」を任命。近所づきあいをする中で「あのおばあちゃんが引きこもりがちだ」「転んでけがをした」といった情報を拾い上げては、町内の地図「支え合いマップ」に印を付け、さらに「一人暮らし」「男性」「女性」などと色分け。町内会福祉委員会の十八人で共有してきた。
 しかし、緊急事態宣言を受け、自宅に行って話すことなどは難しくなった。高齢者が集う公共施設も閉鎖。家に閉じこもる日々が続いた影響は大きく、宣言解除後には足腰が弱り、玄関にさえ出てこられない人も。「これまで以上に町内で密に支え合う仕組みが重要」と福祉委員会の代表を務める藤野千秋さん(78)は危機感を持ったという。

自身の日々の生活について話す男性(右)=愛知県安城市の公民館で

 そこで、一人暮らしの約二十人を対象に始めたのが「豊かさダイヤグラム」の作成だ。健康や収入、家族、社会活動、趣味、友だちの六つの項目ごとに、充実度を五段階で評価。持病やけががあれば「健康」、浪費傾向などがあれば「収入」の数値が低くなる。「数値の低い項目を普段から把握し、必要に応じて市社会福祉協議会や民生委員と情報を共有したり、協力をあおいだりするのが町内会の役割」と藤野さんは言う。
 ポイントは本人と話し合って評価を決めること。個人情報はもちろん厳守だ。
 六月十五日、藤野さんや市社協の職員らが待つ公民館にやってきた男性(86)。ほとんどが顔見知りのため趣味や交友関係など話は尽きない。男性は料理好きで近所の人に振る舞うこともあると聞き、趣味や友人は「5」がついた。足が悪くつえを使うが、図書館まで歩いて通うのが日課のため健康は「4」。「どの点に気を配ればいいかが、可視化されてつかみやすい」と藤野さんは手応えを感じた様子だ。一方、男性は料理の腕を町内会の会合でも生かしてほしいと言われ、「ケアされるだけでなく、自分もできることがあるのはうれしい」と喜んだ。評価は一年ごとに見直される。

◆コロナ孤立 近所で支え合いを

 城南町内会が取り入れた「支え合いマップ」と「豊かさダイヤグラム」を考案したのは、住民流福祉総合研究所(埼玉県)の木原孝久所長(79)だ。東日本大震災後、被害の大きかった岩手県沿岸部を中心に導入が進んでいるという。
 「三密」を避けることが求められる今後は「身近なつながりが一層大切」と木原所長。同県社会福祉協議会地域福祉企画部の川崎舞美さん(38)は「コロナ禍の今、自然な形で顔を合わせる機会がある『近所』だからこそできる支え合いがあると痛感した」と話す。
 日本福祉大社会福祉学部准教授の斉藤雅茂さん(39)は「膝を詰めて話し合うのが、これまでの地域福祉」といい、対面での交流が一番と説明する。一方で、自身を含むグループで行った最新の研究によると、電話やメールでやりとりするだけでも健康リスクは減少することが分かった。
 パソコンやスマートフォンの画面越しでの会話の方が、気軽に大勢が関われる可能性もある。「地域福祉に万能薬はない」と斉藤さん。「コロナ禍でもあきらめることなく、働き掛けを続けるべきだ」と訴える。

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