キャッシュレス 急激な拡大は慎重に

2020年7月8日 07時23分
 キャッシュレス決済のポイント還元が終わった。消費税増税の影響緩和とキャッシュレス推進が狙いだが、現金払いが依然多く効果は薄かった。国は、実情を踏まえた対策を慎重に探るべきだ。
 現金を使わないキャッシュレス決済をめぐるポイント還元は、昨年十月の消費税増税時に始まり、先月末終了した。電子マネーやクレジットカードを使って制度に参加した中小小売店やコンビニなどで買い物すると、ポイントが還元される仕組み。たまったポイントは商品などと交換できる。
 事業の最初の目的は増税による消費落ち込みの抑制だった。だが増税後の昨年十〜十二月の国内総生産(GDP)では個人消費が前期比2・8%減、年率換算ベースだと前期比7・1%減とダウンした。増税による消費減を抑えられないままコロナ禍に直面したとの分析が可能だろう。
 国は事業に七千七百五十億円を投じた。増税の目的は社会保障予算の充実であり、一時的とはいえ巨費を投じたこと自体、ちぐはぐな施策といえる。その上、消費刺激効果も低調といえ、見通しが甘かったと指摘せざるを得ない。
 一方、キャッシュレス化は前年より2・7ポイント増え、昨年末で26・8%になった。国は将来40%とする目標を掲げている。
 ただ、キャッシュレス決済は、小売店にカード会社などへの手数料負担がかかることも忘れてはならない。
 事業期間中は国が手数料の一部を負担していたが、今後は販売額の5〜7%程度の負担に戻る。小売店には相当な負担であり、国が一定の補助を続けることも視野に対策が必要だろう。
 国は九月から現金給付の足かせにもなったマイナンバーカードを活用したポイント還元を始める。しかし、急激なキャッシュレス化には冷静な対応を求めたい。
 日本でキャッシュレス決済が諸外国と比べて少ないのは、治安のよさを背景に現金決済への信頼が厚いためだ。さまざまな事情で現金支払いだけに頼る人も多い。さらに消費に関連した個人情報を国や特定の企業に把握されることへの強い警戒心もある。
 キャッシュレス化は消費の利便性を高め海外旅行者の迎え入れにも恩恵が大きいが、多くの国民は依然、急激な普及拡大には懐疑的ではないか。
 国は拙速な推進方針を改め消費者や小売店の実情に寄り添った姿勢に転換すべきだ。

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