病床、備えは十分か 4月は感染増に追いつかず

2020年7月10日 05時50分

 東京都内で9日、新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最多の224人に上った。懸念されるのが今後の医療体制だ。4月には医療現場の逼迫ひっぱくが感染確認のピークから2~4週間遅れでやってきた。国や都は「まだ医療体制に余裕がある」と説明するが、備えは十分なのか。(井上靖史、原田遼、藤川大樹、飯田樹与、中沢誠)
 「病床に空きはある」「4月より落ち着いている」。コロナ患者を受け入れる都内の複数の医療機関に尋ねても、切羽詰まった答えは返ってこない。
 都内の感染者は、無症状や軽症の20~30代が中心だ。都内で確保した病床1000床のうち、9日時点の入院患者は441人にとどまる。加藤勝信厚生労働相は「都の医療体制は、直ちに逼迫する状況にはない」と語った。
 だが、感染経路不明者は高止まりしており、市中に感染が広がっている可能性は否定できない。重症化リスクの高い高齢者に感染が広がれば、医療危機に直結する。厚労省が6月に示した試算は、再流行した場合に都内で最大約9000人が入院すると予測している。
 9日の都の会議で、専門家は医療提供体制への警戒度を引き上げた。「今後、患者数が増加する見込みを踏まえ、直ちに3000床の病床確保の着手が必要」と提言。医療提供体制の強化を急ぐよう訴えた。
 厚労省の調べでは、4月の感染拡大期に、都道府県へ新規感染者の報告が上がったピークは10日、入院患者数のピークは28日、重症患者数のピークは5月8日だった。感染確認から医療機関へ負荷がかかるまでに2~4週間の時間差が生じる。

 それでも当時は感染急増に病床の確保が追いつかず、医療体制の逼迫を招いた。都の担当者は「病院に『患者をすぐに転院させられない』と言われたりして、病床の確保に時間がかかった」と振り返る。厚労省の担当者も「流行のペースが速すぎた」と話す。
 都の計画では、感染拡大の状況に応じ、確保する病床数を1000から3000、4000へと増やす。都は現在、3000床規模に引き上げるため医療機関へ要請中だ。
 コロナに対応できる病床数を602から240まで減らしていた埼玉県も、再流行を受け、県内の医療機関に病床の確保を要請。10日までに600床体制になる予定という。
 しかし、病床の確保は簡単ではない。9人の感染者が入院している都内の大学病院の副院長は「コロナの場合、看護師は通常の4倍くらい必要。専用病棟や看護師の確保など、準備に3週間ほどかかった。病床を増やすにしても、すぐにはできない」と話す。
 日本感染症学会理事長の舘田たてだ一博・東邦大医学部教授は「入院のピークも重症者のピークも遅れてやってくる。今から備えておかないと手遅れになる」と指摘する。

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