出征旗、76年ぶり故郷に 米NPOから多摩市の遺族へ

2020年7月10日 06時42分

父の出征旗を前に、思いを語る田中政幸さん=いずれも多摩市で

 太平洋戦争中の一九四四年に出征し、陸軍に従軍してフィリピン・ルソン島で戦死した多摩市連光寺の田中文雄さんの出征旗が米国内で見つかり、長男の政幸さん(77)のもとに届けられた。市は借り受けて展示する予定で、政幸さんは七十六年ぶりに故郷に戻った出征旗を手に「平和の大切さを子どもたちに伝えてほしい」と話す。 (服部展和)
 出征旗は四四年一月、田中さんが戦地に持って行った縦七十五センチ、横百三センチの日章旗。「祈武運長久」の文字とともに家族や親類、近所の知人ら五十三人の名前が寄せ書きされている。
 南方軍に配属された田中さんは四五年七月、激しい戦闘があったルソン島北部の山地で戦死した。三十二歳だった。戦地から自宅に戻った遺品はなかった。
 出征旗は終戦直後、米兵がノースカロライナ州の自宅に持ち帰っていた。最近になって、娘が遺品を整理していて発見。旧日本兵の遺品返還に取り組む米国のNPO「OBON(オボン)ソサエティ」を通じ、日本遺族会に調査を依頼した。その結果、田中さんの出征旗と分かり、五月に政幸さんに郵送で届けられた。

田中文雄さん

 政幸さんは七年前、父が戦死したとみられる場所を初めて訪れた。「封を開けたとき、父が戦死した深い谷の光景が鮮明に浮かんだ」という。届いた翌日、墓前に持参し「長い間でした。よく戻ってきてくれました」と語り掛けた。
 政幸さんは六月に市役所を訪れ、阿部裕行市長に報告した。市は八月に市役所で展示する方向で準備を進める。

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