今こそ癒しの能楽 「コロナ終息祈願」公演で再始動

2020年7月10日 07時51分
 新型コロナウイルスの影響で活動がストップしていた能楽(能、狂言)の世界も、公演が再開するなど動きだしている。そして、今月下旬から八月、各流儀の宗家や人間国宝らが総出演する「能楽公演2020〜新型コロナウイルス終息祈願〜」(能楽協会、日本能楽会など主催)が東京・国立能楽堂で開催されることになった。東京では九日、二百二十四人の感染者が出たが、主催者は感染防止に万全の対策をとって開催する予定だ。 (山岸利行)

「能楽公演2020」への抱負を語る山井綱雄=東京都渋谷区の国立能楽堂で

 「能楽の歴史は、いいことばかりではなく、厳しい時でも耐えてきた。いまコロナで厳しい時だからこそ、未来に向けてのメッセージを発信したい」
 能楽協会理事で、シテ方金春流の山井綱雄(47)は意欲を見せる。
 公演はもともと「東京2020オリンピック・パラリンピック能楽祭」として今夏に開催予定だったが、五輪延期で宙に浮いてしまった。関係者で協議した結果、時間をかけて準備してきたこともあり「やろう」という結論に達した。「能は天下太平を祈念してきた。そんな意味から開催することで意見が一致した」と話す。
 「二〇一一年の東日本大震災の時も流儀を超えて、(支援のための)公演を行った。いざという時、能楽界の団結力はすごい」と言い、「今のわれわれも最大限の努力をする。ボクシングに例えるなら、ファイティングポーズをとり続けるということです。物事を動かすのは、最後は熱意だと思う」。
 コロナの終息が見えてこないなかでの公演だが、感染防止のため、地謡を通常の八人から五人に減らしたり、笛や太鼓など囃子(はやし)方の距離も十分確保するなどの対策を施す。
 最古の舞台芸術といわれる能楽だが、「いつ滅んでもおかしくない」と危機感を募らせる。自身は映像コンテンツを利用した普及が急務と考え、映像制作活動も手掛けている。
 とはいえ、能楽は難解なイメージがあり、近寄りがたいと考える人も多いようだ。
 「戦国時代の武将は能をやっていた。いつ死ぬかもわからない極限状況の中で、能で心を癒やしていた。心の浄化作用です」と、能の効用を説きながら「見たままぼーっとしていてもいい。理屈でなく、人間の内面にある生命力に共鳴して、ヒーリングにつながります」とも語った。
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 公演をアピールするための動画も配信されており、能楽師たちが「能楽は日本が世界に誇る舞台芸術」「文化芸術は生きていくうえで必要不可欠」「世界の平和を祈る能楽を通し、人間の豊かな感情やこの世界のすばらしさを感じましょう」といったメッセージを発信している。動画は「能楽公演2020 ユーチューブ」で検索。

「翁」観世清和

「西行桜」梅若実=公演写真はいずれも(c)能楽協会

◆公演スケジュール

<能楽公演2020〜新型コロナウイルス終息祈願〜> 七月二十七〜三十一日、八月三〜七日の計十日間、東京・国立能楽堂で開催。全公演午後二時開演。主な演目、演者(シテ=主役)は次の通り。
 ▽七月二十七日=能「翁(おきな)」観世清和▽同三十一日=狂言「月見座頭」山本東次郎▽八月四日=能「安宅(あたか)」観世銕之丞▽同五日=能「西行桜 杖(つえ)之舞」梅若実▽同六日=狂言「木六駄」野村万作▽同七日=能「道成寺」宝生和英
 ※新型コロナウイルス感染防止対策として、座席は前後左右を空けた市松模様型で、通常六百二十七席の半分となる。問い合わせは能楽協会=(電)03・5925・3871。
<能楽> 「能」「狂言」を合わせて「能楽」と呼ぶ。室町時代から650年以上演じられてきた舞台芸術。能は謡と囃子で演じる歌舞劇で、多くの曲で演者が面をつけているのが特徴。狂言は庶民の日常を描いた喜劇で、ほとんどが面をつけない。

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