<コロナと生きる@いばらき>最後の舞台「恩返しの場に」 高校野球 県独自大会あす開幕

2020年7月10日 07時47分

息子の細田健光さん(右)に「頑張れよ」と声を掛ける光天さん=鉾田市の鉾田一高で

 新型コロナウイルスの影響で中止となった全国高校野球選手権県大会に代わる独自大会「2020年夏季茨城県高校野球大会」が11日に開幕する。鉾田一高(鉾田市)の細田健光(たける)主将(3年)は、同校野球部OBでもある父光天(みつひろ)さん(56)と夢の舞台を目指し、厳しい練習にも耐えてきた。「甲子園にはつながらないけど、父への恩返しの場にしたい」。一度は消えた「夏」に全力で臨む。(松村真一郎)
 健光さんは小学2年の時、光天さんと2人の兄の背中を追うように野球を始めた。
 鉾田一は、春の選抜大会に1回、夏の選手権大会に2回出場した古豪。光天さんは三塁手として出場した最後の夏は準決勝で敗れ、あこがれの地を踏むことはできなかった。
 「自分の夢をかなえてくれ」。光天さんから口癖のように言われていた健光さんは、「親子で甲子園に行こう」という約束を果たすべく父の母校に入学。1年の夏から一塁手のレギュラーをつかんだ。
 昨秋の関東高校野球県大会地区予選では、水戸地区の代表決定戦で敗退。課題の打撃力アップへ向け、他の部員とともに、木製バットよりも芯が小さい竹バットを振り続けた。
 野球部の父母会長を務める光天さんは、毎週末の練習に足を運び、試合後も課題や反省点を教えてくれた。コロナの影響で休校が続いた三月からの約3カ月間、全体練習がほとんどできなかった間も、自宅でのバッティング練習を手伝ってくれた。
 3年の夏は、父との約束を果たすラストチャンス。しかし、コロナ感染の収束が見通せない中、日本高野連は五月二十日、第102回全国高校野球選手権大会の中止を発表した。その夜、自宅で息子と向き合った光天さんは泣いた。その時の心情を聞くと、光天さんは「夢が絶たれて悔しかった」と言葉を詰まらせた。
 県高野連は選手権大会中止の前後から代替策を模索し、五月二十六日に県独自大会の開催を決めた。「これまでの目標はなくなったけど、代替大会で頑張って」と息子を励ました光天さん。鉾田一を甲子園に3度導き、昨年六月に亡くなった恩師の天野清二さんの「『難』があるからありがたみを感じる」という教えも伝えた。
 健光さんは「恩返しをするから見守っていて」と父に返した。甲子園への道は閉ざされたが、県独自の大会で優勝すれば「甲子園に行ったのと同じ」。十一日の開幕日に水戸ブロックで茨城高(水戸市)と対戦する。
 健光さんは今大会で野球人生に一区切りを付けるつもりだ。健光さんら息子3人の野球に携わってきた光天さんにとっても大きな節目となる。光天さんはスタンドで試合を見守る。「楽しみや寂しさ、不安が入り交じった複雑な気持ちです」

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