退職まで2400時間 制服に着替える時間は労働時間?

2020年7月10日 14時00分

全国各地の郵便局に貼られていた、ユニフォーム通勤を禁止するポスター=鈴木さん提供

「職場で制服に着替える時間が労働時間に入っていない。おかしいんじゃないか」。そんな疑問が寄せられた。取材すると、着替えも原則、労働時間と言えるが、それには条件もあり、職場によっては境界線があいまいになっていることが分かった。この問題を巡って労使が争い、4月に静岡地裁浜松支部で和解が成立したある訴訟に注目してみた。(篠塚辰徳)

◆ゆうちょ従業員らが会社に賃金求める

訴訟は仕事で制服を着ることが義務となっている日本郵便とゆうちょ銀行の静岡県内の従業員3人が、両社を相手取り、2年ほどの間で、着替えに要した時間分の賃金を求めたもの。原告のほぼ主張通りの金額計56万円を両社が支払うという和解内容で、原告側は「実質的に着替えも労働と認められた」と受け止める。一方、両社の担当とも取材に「和解はしたが、着替え時間を勤務に含めないという対応は今後も変わらない」と話した。
労働基準法では「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を労働時間と定める。2000年の最高裁判決によると、「制服着用が義務付けられている」「制服での通勤が禁止され、社内で着替えるほかない」などの場合は労働時間とみなされる。
今回の訴訟で原告側は、全国各地の郵便局の更衣室に「ユニフォーム通勤禁止」を指示するポスターが張られていたことなどを示したが、両社は、社内での着替えはあくまでも要望の範囲で「義務付けてはいない」との姿勢を貫いた。原告の主張に沿った金額を支払うのは「和解金」であり「賃金の支払い」ではないという立場だ。

◆1日7分 退職までに2400時間

1回の着替えに要するのは7分ほどだが、1年では60時間、退職まで40年で計算すると2400時間に達する。会社側が認めない以上、従業員が着替え時間分の賃金を支払ってもらうためには各地で訴訟を起こすしかない。
今回の訴訟で原告側代理人を務めた塩沢忠和弁護士によると、両社のように着替えを労働時間と認めない会社は少なくないといい、その一因を「日本の企業風土にある」と指摘する。「雇用側も働き手も『サービス残業は当たり前』と考えるような傾向があり、双方とも更衣時間について疑問に思ってこなかった」
原告の1人で郵政ユニオン東海地方本部顧問の鈴木英夫さん(66)=浜松市中区=は「職場では労働時間の境目があいまいで、休憩がとれないのは自己責任という風潮すらあった。労働時間のあり方について今後も問い続けたい」と話した。

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