コロナで途切れた月命日の献花 交通事故で娘が死亡、広島から東京まで7年間通い続けた母 

2020年7月11日 14時00分
半年ぶりに、綾乃さんが亡くなった現場そばに花を供えた森田和子さん =3日、東京都千代田区の祝田橋交差点で

半年ぶりに、綾乃さんが亡くなった現場そばに花を供えた森田和子さん =3日、東京都千代田区の祝田橋交差点で

  • 半年ぶりに、綾乃さんが亡くなった現場そばに花を供えた森田和子さん =3日、東京都千代田区の祝田橋交差点で
<取材ファイル>
 東京都千代田区の祝田橋交差点の片隅で今月3日、広島市中区の森田和子さん(70)が花を供えていた。7年半前、長女綾乃さん=当時(37)=が交通事故で亡くなった場所。月命日に欠かさなかった献花を、新型コロナウイルスの影響もあり半年ほど中断していた。「娘に会いたい」と現場を訪ねることすら、コロナ禍が難しくさせている。
 皇居のお堀沿いのガードレールに、白いカサブランカやカーネーションの花束を、和子さんが慣れた手つきでくくりつけた。空を見上げ、「周りの景色が変わったね」と心の中で話し掛ける。80回以上続けてきたことを、同じように。
 綾乃さんは2012年12月22日、タクシー乗車中の事故で亡くなった。祖父の死を機に「身内に医者がいた方がいい」と高校生で志し、循環器内科の医師に。事故後、患者たちから感謝の手紙が届き、和子さんは娘を誇りに思った。
 18年1月、献花のことを本紙が紹介した。翌年2月、花束に1通の手紙が入れられた。記事を読んだという皇居周辺を走る人からで「必ず献花にむけ手を合わせております」と書かれていた。和子さんは「こんなご縁もあるんですね」と笑みをこぼした。
 献花を続けることに「私のエゴじゃないか」という迷いもある。通り掛かった人から「いつまでやるのか」と言われたこともあった。東京五輪の開催時に献花があるのは「迷惑だろう」と考え、今年1月に花束を片付け、五輪が終わるまでは控えようと決めた。
 それでも、綾乃さんの誕生日の6月19日だけは、花を供えるつもりだった。だが、東京などで新型コロナの感染が収まらず、時期を遅らせた。
 和子さんにとって、交差点は綾乃さんの存在を感じる特別な場所。しかし親族の介護もあり、思うように上京できない。新幹線で片道4時間離れた東京の感染者数の推移も気に掛かる。
 「12月の命日にはどんなことがあっても。行けるなら、秋ごろにも」。再び空を見上げて話し掛ける日は、しばらく先になりそうだ。(福岡範行)

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