文書廃棄で「五輪とコロナ」都の対応検証難しく

2020年7月12日 05時50分
新型コロナウイルスについて、厚労省クラスター対策班が東京都(左)と大阪府・兵庫県について状況を分析した資料

新型コロナウイルスについて、厚労省クラスター対策班が東京都(左)と大阪府・兵庫県について状況を分析した資料

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 新型コロナウイルス対策の参考となる感染状況の予測文書を巡り、東京都は提供を受けた3通のうち2通を廃棄し、感染者数が最も少ない1通だけを公表していた。当時は2020年東京五輪・パラリンピックの開催が揺れていた時期だった。都が、コロナと五輪という二大局面に、どう対応しようとしていたのか。文書廃棄によって検証を難しくしている。(中沢誠、岡本太、小倉貞俊)
 「様子を見てから広げるのではなく、危機管理の要諦は最初に大きく構えること」
 新型コロナへの対応を巡り、小池百合子知事は4月10日の記者会見でこう強調した。だが、3月に厚生労働省クラスター(感染者集団)対策班の押谷仁・東北大教授から、都が予測文書を受け取った時の対応は、この考え方とはかけ離れている。
 「対策を取らなければ1万7000人」との予測文書を最初に受け取ったのは3月17日。政府専門家会議は2日後、東京や大阪などの都市部で感染経路不明の感染者が増えているとして、「オーバーシュート(爆発的な感染拡大)を伴う大規模流行につながりかねない」と警鐘を鳴らした。都は同日、押谷氏の再計算で「3000人」の予測を新たに受け取った。
 22日、大会組織委員会の森喜朗会長と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が電話会談で「延期を含めた検討を始める」と合意し、五輪中止の回避にこぎ着ける。この翌日に、小池氏は再々計算された320人の予測文書だけを公表した。
 延期が正式に決まったのは24日。その翌日、都内の感染者数は急増し、小池知事は緊急会見を開く。「感染爆発 重大局面」とのボードを掲げ、週末や夜間の外出自粛要請に踏み切った。
 都幹部は「五輪のために感染症対策を遅らせたということはない」と説明。一連の予測文書について「驚くような試算から楽観的なものまでいろいろあった。それぞれの数字を踏まえながら、最終的には感染者数の推移を見て判断しようとなった」と話す。

 都の判断は「最初は大きく構える」ではなく、「様子を見てから広げる」だったようにみえる。結果的に、4月2~8日の感染者数は320人予測の倍以上となる777人に上った。
 この時期、大阪府も厚労省クラスター対策班から感染状況の予測文書を示されたが、公表への対応は都と異なった。
 府が3月18日に受け取った予測文書では、何も対策を打たないと、大阪府、兵庫県の全域で4月3日までに患者が3374人に増える、という内容だった。府は19日、予測を基に3連休中の兵庫・大阪間の往来自粛を要請。20日に予測文書を公表した。
 対応の違いについて都は「大阪府の場合はライブハウスでの集団感染があり、クラスター対策班が(府の)中に入って感染状況を分析していた」と予測精度の違いを挙げる。

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