商店街 メロンと活気「育成中」 葛飾区・堀切ラッキー通り

2020年7月12日 08時48分

堀切ラッキー通り商店街でメロンを育てる岩崎修さん(右から2番目)ら

 「メロン育成中」と書かれたのぼり旗が風に揺れる。ここは温室ではなく、下町のとある商店街。メロンの網目模様のような路地を歩いていくと、メロンの形をしたポスターにメロン色のドア、さらにメロンおじさんに行き着いた。商店街がメロンであふれ返るその訳とは。
 黄緑色ののぼり旗が異彩を放つ、葛飾区の堀切ラッキー通り商店街。六月下旬のある日、各店の軒先でプランターに植えられたメロンらしき植物が、腰高まで茎を伸ばしていた。
 メロンといえば温室で大切に育てられ、一玉一万円の値段がつくこともある高級フルーツ。それなのに都市の商店街で、しかもプランターで。ギャップの大きさに、通り掛かった人からも「えっ!」と驚きの声が漏れた。

商店街で昨年収穫されたメロン(城北信用金庫提供)

 謎を解くべく、商店街の会長を務める薬局店主の岩崎修さん(66)を訪ねた。差し出された名刺はメロンを思わせる黄緑色で、メロンの写真が添えられている。「商店街でなぜって思ったでしょ。そこが狙い」。岩崎さんはにやりと笑うと、真剣な表情で続けた。「魅力ある場所だと思ってもらわないと廃れてしまう」
 三十一店舗が連なるラッキー通り商店街も、後継者不足や空き店舗の問題に直面している。近くにある観光名所「堀切菖蒲園」の見頃の時期こそにぎわうが、それ以外の季節は集客に苦戦する。打開策の一つとして植物の栽培が頭に浮かんだ。「ゴーヤーやスイカはありがち。他にないか…」。そう悩んでいた時、メロンの苗が売られているのを見て「これだ」と手に取った。
 二〇一六年、各店舗に苗を配って栽培を始めた。当然メロンを育てたことがある人はいない。「大きくなった? 水やりの頻度は??」。分からないことが多いからこそ店主同士で会話が生まれ、「何を育てているの」と買い物客の興味も引いた。

子どもから「メロンおじさん」と親しまれる梅沢昭司さん=いずれも葛飾区で

 店主らが「名人」と頼りにするのが、地域住民として参加するようになった梅沢昭司さん(78)だ。メロン栽培とは縁遠い製造業の出身だが、毎年大きく育て上げるため慕われるようになった。「子どもたちからメロンおじさんと呼ばれるから大変だよ」と言いながらも、どこかうれしそうだ。
 実が大きくなる夏には品評会を開き、最も重いメロンを育てた人に表彰状を贈る。だからみんな真剣なのだ。さらに、その場でカットメロンを振る舞うイベントも開催。すると、一度味わった人たちは「今年も育てているのね」と商店街を気にかけてくれるのだという。こんなふうに、メロンを核にして商店街に少しずつ活気が戻ってきている。
 あちこちに貼られているメロンをかたどったポスターは、メロン作りに参加している城北信用金庫堀切支店が製作した。路地が多い堀切地区の地図をぼんやり眺めていた舩山(ふなやま)裕二支店長(49)が「メロンの網目模様のようだ」と思ったのがきっかけ。支店長は職場のドアを自らメロン色に塗り上げ、「堀切を明るく元気にしたい」とノリノリだ。

メロンをあしらった商店街のオリジナルTシャツ

メロンの刺しゅうが入ったメロンマスク

 商店街ではTシャツなどのメロングッズが次々と生まれた。新型コロナウイルス禍では、メロンの刺しゅうをあしらったマスクメロンならぬ「メロンマスク」まで。仕掛け人の岩崎さんは「商店街で立ち話をする人の姿が桁違いに増えた。菖蒲園の季節以外にも人を呼び込みたい」と意欲をみせる。
 七月に入り、メロンの実はこぶしくらいに成長している。感染防止のためカットメロンの振る舞いは中止だが、八月二十三日に品評会が予定されている。今年はどのくらい大きくなるのか、楽しみだ。
 文と写真・加藤健太
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