「藤井七段、ミスなく充実」 木村王位に『受け師の道』著者の樋口記者が聞く

2020年7月13日 14時00分

文化部樋口薫記者と対談する木村一基王位=東京都千代田区で

 将棋の第61期王位戦7番勝負(本紙主催)の開幕に合わせ、昨年、史上最年長で初タイトルを獲得した木村一基王位(47)の苦難の歩みを描いた『受け師の道 百折不撓ひゃくせつふとうの棋士・木村一基』(樋口薫著)が東京新聞から刊行された。初防衛戦の相手は、史上最年少での初タイトルを目指す藤井聡太七段(17)。「最年長VS最年少」として注目を集めるシリーズへの抱負や半生記の感想などを、本書をまとめた記者が木村王位に聞いた。

◆ステイホーム期間は「将棋の研究ばかり」

 4~5月、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言に伴い、タイトル戦の多くがストップ。木村王位も対局が延期となり、イベント出演の予定がなくなった。ステイホーム期間中は「将棋の研究ばかりして過ごしていた」という。「対局がないと緊張感が失われがちだが、こういう時に努力する人としない人とで、蓄積の差が出る。負けないようにと取り組んでいた」
 感染防止のため、研究会はネット対局を使った。「やはり対面で指す方が性に合っているが、ネットでも指し手を見れば『ああ、こういうことを考えているんだ』というのが伝わってくる」。研究の合間には、自宅で「んで埼玉」や「新聞記者」などの邦画を見て、気分転換したという。
 加えて重点的に取り組んだのが体力づくり。普段から若手に体力負けしないよう、ジョギングを習慣にしていたが、自粛期間中は頻度を倍に増やした。「人のいない時間帯を見つけて走るようにし、体重も落とした。2日制の王位戦は長時間座ることになるので、やはり身軽な方がいい」。技術と体力両面で、準備万端ぶりを強調する。

「受け師の道 百折不撓の棋士・木村一基」

◆『受け師の道』刊行は「恥ずかしい」

 初タイトルまでの軌跡を追った『受け師の道』については「タイトルを取れたのは大きなことだったが、あらためてこれまでを振り返ると、至らなさの方が多かったと感じる。そういう話が世に出るというのは、恥ずかしい感情がある」と、照れくさそうに答えた。
 作中ではあと一歩でタイトル獲得を逃し、やけ酒を飲んだり、涙したりするシーン、さらには不眠に苦しむなど、人間味あふれる姿も描いた。「王位を取ることがなければ、あまり振り返りたくなかった姿」と苦笑いしつつ「特に40歳を過ぎてからは、現状維持を考えて生きてきた。そうしてぶつかっていった選択が、この結果につながったとすれば、良かったと思う」と振り返る。
 小学校時代からのライバルである行方尚なめかたひさ九段(46)や月浩貴づきひろたか八段(47)、長年、研究相手を務める佐藤天彦あまひこ九段(32)ら、棋士たちの証言も多数織り込んだ。「同業の棋士が私をどう見ているかという話はなかなか知る機会がなく、新鮮な気持ちで読んだ」

◆藤井七段との対戦 万全尽くす

 王位戦七番勝負は、棋聖戦でも挑戦者となり、絶好調の藤井七段との対戦。開幕時点での年齢差は30歳。両者の対照的な棋歴も話題だが「年齢差は縮めようがないので、意識しても意味がない」と、自然体を強調する。「藤井七段はミスが少なく、充実している。たいへん強い人」と、その実力を認めた上で「自分なりに研究し、体力面も備えて、『これで駄目なら仕方ない』と終わった後に言えるような状態で臨みたい」と意気込んだ。
     ◇
 王位戦七番勝負は1、2日の第1局で藤井七段が先勝。第2局は13、14日に札幌市で指される。
 『受け師の道』は本紙の連載記事を再構成し、書籍化にあたり「王位獲得記念トークショー」や第60期王位戦七番勝負の解説付き棋譜を収録した。定価1540円。四六判212ページ。本紙販売店から宅配するほか書店でも販売。問い合わせは、東京新聞出版・社会事業部=電03・6910・2527

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