訪問介護ヘルパー苦悩 感染リスクと使命感板挟み

2020年7月14日 13時55分
 新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークや在宅勤務が浸透しつつある一方、こうした働き方が難しい仕事もある。その1つが障害者や高齢者らの訪問介護を担うヘルパーだ。利用者を支える使命感を抱きながらも、感染予防のため「不要不急のサービスを減らせれば」との声も上がる。現場は悩ましい問題に直面している。(対比地貴浩)

利用者の女性を介護する高橋倫子さん

 午前9時前、ヘルパーの高橋りんさん(53)は同僚1人といつものように東京都江東区内の分譲マンションの1室を訪れた。ここに住む山崎広美さん(57)は背骨にある靱帯じんたいが骨になる難病「後縦こうじゅう靱帯骨化症」を患い、下半身も動かない。ベッドで寝たきりが2日続くと、ひどい床擦れになるため、高橋さんは「1日も介助を止められない」と話す。
 業務上、利用者との接触は避けられない。この日も、前夜からたまった尿を捨て、タオルで体を拭き、着替えさせ、ベッドから電動車いすに2人がかりで移すなど計1時間ほど密接状態に。「ヘルパーは外回りが多く、利用者を感染させたらと不安になる」と高橋さん。マスクを2重にし、混雑する公共交通を避けるなど対策を徹底するが、リスクをゼロにはできない。
 山崎さんにもヘルパーを毎日利用せざるを得ない事情がある。自身は都内の民間企業で働き、電動車いすに乗せてもらわなければ通勤できない。同居の夫は認知症で、力を借りられない。マンションのローン支払いもあり「働きたい。社会と接点も持ちたいし、ヘルパーがいないと生活が成り立たない」と訴える。
 民間調査会社「パーソル総合研究所」のテレワーク実態調査(5月29~6月2日実施)によると、職種別の実施率でヘルパーを含む福祉系専門職は最低の2・5%だった。
 高橋さんが勤める「グッドワン」は約150人のヘルパーが在籍する。利用者からの感染リスクもあり、「自分が感染すると、子どもの面倒を見る人がいなくなる」といった理由で、緊急事態宣言期間中に仕事を休んだヘルパーも1割ほどいたが、高橋さん自身は、山崎さんのような利用者もいるので「命に関わる場合もあるから休業する気は起きにくい」と語る。

◆サービス絞る取り組みも

 一方で、同社は感染リスクを下げようと、不要不急のサービスを減らす取り組みも始めた。買い物や洗濯など必ずしも毎日必要のないサービスの回数を減らしたり、同居や近隣の家族に代行してもらったりといった具合だ。ただ、利用者が発熱した際に、「感染の疑いがあるので訪問できない」と伝えても理解されないースもあり、一筋縄ではいかない。高橋さんは「こちらから強く要望するのは難しい」と苦慮する。
 介護問題に詳しい淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「善意ある事業所ほど、こうした問題を抱える」とし、「コロナ禍では利用者の状態に応じて優先度を決め、低い人には割り切ってサービスを減らすのも一つの考えだ」と話す。訪問介護をほぼ民間に任せている現状にも触れ、「国や自治体が臨時にヘルパーを雇い、業務をシェアしてはどうか」と提案する。

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