香港予備選投票 国安法反対の強い民意

2020年7月15日 08時20分

 香港で九月に予定される立法会(議会)選挙に向け民主派が実施した予備選で目標をはるかに超える六十一万人が投票した。統制を強める香港国家安全維持法(国安法)への強い反対の民意といえる。
 立法会(定数七〇)選で過半数獲得を目指す民主派は、候補者を絞り込み共倒れを防ぐため、十一、十二日に、独自の予備選を実施した。予備選主催者によると、香港の登録有権者の約14%に当たる約六十一万人が投票した。
 民主派の目標だった十七万人の三・五倍余の有権者が投票したのは、民主化運動の弾圧を正当化する国安法への香港住民の反発が、それほど強いということである。
 予備選実施にあたり、中国政府に操られる香港政府は「国安法に違反している可能性がある」と警告し、民主派に圧力をかけた。
 国安法は、国家分裂や政権転覆などを犯罪行為として禁じている。親中派との選挙戦を有利に進めようとする民主派の工夫がなぜ政権転覆などの犯罪とされるのか、全く理解に苦しむ。
 さらに、香港警察は予備選の直前に、投票システムを担う民間の世論調査機関を家宅捜索し、投票開始が遅れた。同機関が個人情報を流出させた疑いがあるという理由での捜索だが、予備選を妨害する介入にしか見えない。
 そもそも、国安法は中国が国際公約した香港の「一国二制度」を葬り去るものであり、すぐにでも撤回すべき法である。
 中国の全国人民代表大会(国会)常務委員会は九月の立法会選を前に、国安法を異例のスピード審議で可決、施行させた。
 「法治」を装ってはいるものの、民主化を求める香港住民への脅迫や威嚇行為を正当化することこそが目的の悪法だといえる。
 香港紙の報道によると、香港政府は、国安法反対の立場を表明した候補には立法会選への立候補すら認めない意向だという。それが現実のものとなるなら、もはや、香港住民の代表を決める選挙の名に値しない。
 予備選を主導した香港大准教授は香港メディアに「六十万人もの市民が恐れず投票で声を上げた。香港人は民主主義の追求をあきらめていない」と述べた。
 国安法は、一九九七年の香港返還以降、中国による最悪の締め付けだ。「民主主義」そのものへの攻撃とみるべきだろう。自由を守るため奮闘する人々を、国際社会が捨ておいてよい理由はない。

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