1日6万人、米国で再拡大するコロナ 楽観論吹き飛んで医療崩壊の危機

2020年7月16日 06時00分

米西部アリゾナ州で6月、病院のベッドに横たわるマーク・ウルキザさん。右上は娘のクリスティンさん=AP

 【ワシントン=金杉貴雄】米国の新型コロナウイルスの感染拡大の被害が再び深刻な事態となっている。1日の新規感染者はニューヨークなどが中心だった4月ごろの倍の1日6万人前後に急増。トランプ政権は当初、重症化しにくい若者の感染が多いと楽観視していたが、感染が高齢者にも拡大し医療崩壊が危ぶまれ、死者も再増加している。

◆専門家の意見聞いていれば死は防げた

 「父の死は、指導力の欠如と、危機の深刻さを認めることを拒絶し、人を危険にさらし続ける政治家たちのせいだ」
 米西部アリゾナ州で6月、新型ウイルスで死亡した製造業マーク・ウルキザさん(65)の娘クリスティンさんは、地元紙に書いた死亡記事で怒りをぶちまけた。
 マークさんが感染、死亡したのは、共和党知事が5月に外出禁止令を解除した3週間後だったという。記事は反響を呼び、米紙ニューヨーク・タイムズの取材を受けたクリスティンさんは「知事やトランプ政権が専門家の意見に耳を傾けていたら、多くの死は防ぐことができた」と強調した。

◆ICU使用率100% 死者も急増

 感染が再増加し始めた6月半ば。政権は「新規感染者の半分は35歳未満。若者は重症化しにくい」と楽観論を唱え、トランプ大統領も7月4日の独立記念日の演説でウイルスは「99%は無害だ」と吹聴した。
 実態は異なった。専門家が示した基準を満たさず、経済活動を再開した南部や西部の州で若い世代を中心に感染者が爆発的に増加。免疫力が弱い高齢者らにも徐々に感染が拡大し、医療機関を逼迫している。
 医療サイト「Covid Act Now」の推計では、南部フロリダ州やアリゾナ州で集中治療室(ICU)使用率は既に100%に達し、南部テキサス州も91%と、厳しい状況だ。
 そんな中、この3州で7月から死者が急増し、それぞれ1日に数十~百人超に悪化。全米の新規死者数も1日1000人近くまで再び増え、楽観論は吹き飛んだ。

◆経済活動の再開急ぐトランプ氏

 現在、全米50州のうち約40州で感染が拡大。深刻なのは陽性率の高さ。アリゾナの26%など、今後も感染の増える恐れがあることを示す数値の州が多い。
 米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は13日、「完全に封じ込める前に経済を再開した。50年後、歴史的に反省するだろう」と暗に政権を批判。経済活動を再び後退させるべきだと主張した。
 だが、11月に大統領選を控えるトランプ氏は、経済活動や学校の再開を急ぐ姿勢だ。被害悪化が激しいフロリダなど3州は、いずれもトランプ氏を支持する共和党知事。大幅な再閉鎖に消極的で、危険な状況が続く恐れはぬぐえない。

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