「クルーズ船の経験、政策に生きた」 神奈川県医療危機対策統括官・阿南英明氏

2020年7月16日 06時00分

神奈川県健康医療局技監の阿南英明氏

<新型コロナインタビュー>
 ―クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染では、阿南さん率いる災害派遣医療チーム(DMAT)が活躍した。
 クルーズ船が横浜港に到着した翌日の2月4日夜、神奈川県の職員から「大変なことになった」と連絡を受けた。県幹部と話し合って「災害」として対応することを決め、黒岩祐治知事がDMATの派遣を要請した。6日には県内のおよそ10チームが駆け付け、感染者の搬送を始めた。
 ―搬送で苦労した点は。
 搬送にはどの患者を、どんな方法で、どこへ運ぶかという3要素があり、このマッチング作業が非常に大変だった。当初は県内の医療機関に電話をかけ、患者を受け入れてくれるかどうかを確認していた。途中から厚生労働省がほかの都府県に声を掛け、都府県ごとに受け入れ可能な人数を取りまとめてくれた。
 ―県内の病院だけでは収容しきれなかった。
 県内には感染者を受け入れるための病床が74床しかなく、一般病床にも広げたが、それでも追い付かなかった。最終的には宮城県から大阪府まで、神奈川以外の15都府県に患者を搬送、横浜港から最も遠い病院は500キロメートルに及んだ。
 ―どのような課題が見えてきたか。
 乗客の多くは高齢で基礎疾患を抱えており、体調を崩す事例が少なくなかった。PCR検査の陽性者を搬送することから始まったが、現場での活動を通じ、PCRの結果にかかわらず、高齢者や基礎疾患のある人を優先的に搬送すべきだと判断した。
 ―クルーズ船の経験は後の対策に生きたか。
 DMATは2月6~26日、計769人の患者を搬送した。このうち540人はPCRで陽性だったものの、無症状や軽症の患者だった。つまり隔離は必要だが、医療行為は要らなかった。政府はこの経験から、軽症者らで病床が埋まり、重症者を救えないという事態を避けるため、軽症者らは自宅や宿泊施設で療養してもらう方針に切り替えた。(聞き手・藤川大樹)

 阿南英明(あなん・ひであき) 1965年生まれ、東京都出身。新潟大を卒業後、藤沢市民病院へ。救命救急センター長を経て2019年から副院長。新型コロナウイルス感染症神奈川県対策本部の医療危機対策統括官。今年4月に県健康医療局技監に就任した。

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