藤井新棋聖誕生 「最年少」が描く新次元

2020年7月17日 08時15分
 将棋の高校生プロ棋士・藤井聡太七段が十六日、棋聖戦五番勝負の第四局で渡辺明棋聖に勝ち、三勝一敗で棋聖位を奪取した。まだ十七歳十一カ月、史上最年少となるタイトル保持者の誕生を祝う。
 新次元の強さだ。相手は棋界のタイトル八つのうち棋王と王将、棋聖を持つ渡辺三冠。難敵を相手に、タイトル戦初登場でいきなりの奪取は、この高校生棋士が驚異の成長曲線を描いている証しだ。
 十四歳二カ月の最年少でプロに。自分の生まれる以前から活躍する先輩たちを倒して、最多連勝記録「二十九」を樹立。それでもなお謙虚な若者が、最年少でタイトル獲得−。小説や漫画なら「うそくさい」と言われそうな物語が現実となった。将棋に限らずより広い分野での励みになろう。
 しかも今年はコロナ禍で対局が延期され、最年少でのタイトルは一度は絶望視された。その不運にめげず、対局の延期中も研究を重ねていたことは、本年度の勝率の九割に迫る破格の高さが物語る。
 特筆すべきは棋聖戦五番勝負の初戦だ。棋士は通常、タイトル戦の番勝負には和服で臨むが、藤井新棋聖はスーツ姿。まだ不慣れなことの象徴のようでもあった。
 盤上でも、守備の駒の金を前線に送る渡辺前棋聖の激しい攻めの前に、攻撃の軸となる飛車と角のどちらかを取られる窮地に。プロ棋士が集まる対局場の控室でも、苦戦を指摘する声が上がった。
 だが藤井新棋聖は果敢に飛車を捨て、そこから優勢を築く。タイトル戦は初登場でも、重圧を全く感じさせない会心の勝利だ。最年少タイトル保持者の誕生にふさわしい戦いぶりだったといえよう。
 同時に進行中の王位戦は、三十歳も年上の木村一基王位が相手。最年長の四十六歳で初タイトルを得た人気棋士との注目の戦いだ。
 今月初めの第一局では、強気の攻めを貫いて先勝。十三日からの第二局では、敗色が濃厚な状況でもあきらめず、大逆転で勝利をもぎ取った。こうしてさらに成長する姿を見守るのも楽しみだ。
 思えば藤井新棋聖がプロになる前の棋界は苦境にあった。
 トップ棋士でもコンピューターに敗れ「将棋は終わった」と言われた。そんな状況を一変させ、将棋の大ブームをつくった天才は、活躍におごらず「記録より実力を高めたい」と志す。この驚くべき棋士を育てた「ふみもと子供将棋教室」の教えを今、玩味したい。
弱い者をなめるな 強い者にひるむな 自分にきびしくしよう

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