彼女たちの部屋 レティシア・コロンバニ著

2020年7月19日 07時00分

◆逆境生き抜く女性たちへの賛歌
[評]師岡カリーマ(文筆家)

 フランス映画界出身のコロンバニが小説に転身してこれが二作目。前作『三つ編み』では、別々の大陸に住む、境遇もかけ離れた三人の女性の物語が同時並行し、最後にそれらの人生が三つ編みのように絡み合い、ひとつの希望となって終わった。逆境にあって、それぞれ孤立無援でもがいているようだった三人は、実はそうとは知らずに、互いにとって必要な存在だった。
 ひるがえって本作ではフランスを舞台に、逆境を生き抜く女たちが、約百年の時を超えて繋(つな)がっていく。物語の主役は、パリに実在する女性会館(パレ・ドゥ・ラ・ファム)だ。それは「運命に翻弄(ほんろう)され、社会に打ち棄(す)てられた女性たちが身を寄せる」巨大な施設。移民、難民、元ホームレス、DV被害者などの住人と、つかず離れず彼女たちを支えるスタッフがいる、安らぎの城塞(じょうさい)都市。そこへ、あることから極度の鬱(うつ)になったエリート弁護士ソレーヌが「治療として」渋々ボランティアにやってくる。ソレーヌはまるで私たち読者に代わってそこへ放り込まれたかのようだ。そのような場所は素通りし、ホームレスから目を背け、忙しく日々を過ごしながら、実は自身も結構必死に生きている私たちに代わって。そこで彼女が得たものとは…。
 ソレーヌの体験と交互に語られるのは、約百年前にこの会館創設のため奔走した救世軍の女性将校ブランシュの闘いだ。行き場のない女性たちに、安全で暖かい部屋を提供するという壮大な構想に身も心も捧(ささ)げ、不可能を可能にしたブランシュは、誰の目にも勝者であろう。でも勝者は彼女だけでない。路上生活時代に五十四回レイプされ、または暴力的な家庭を脱出し、または戦争や虐待を逃れてアフガニスタンやアフリカからたどり着いて、ささやかながらも人生を取り戻した施設の女たちもまた「勝者」なのだと、原題LES VICTORIEUSESは称(たた)えているようである。
 希望と連帯の女性賛歌。本書に元気をもらったなら、さりげなくモチーフになっているV・ウルフの『自分ひとりの部屋』もお薦めしたい。
(齋藤可津子訳、早川書房・1760円)
フランスの作家、映画監督、脚本家、女優。著書『三つ編み』。

◆もう1冊

ヴァージニア・ウルフ著『自分ひとりの部屋』(平凡社ライブラリー)。片山亜紀訳。

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