黒人差別反対運動のスローガン「Black Lives Matter」どう訳す? 偏見と向き合うきっかけに

2020年7月20日 13時50分
大阪市で米国の黒人男性暴行死事件を巡り、メッセージを掲げるデモ行進の参加者=6月(共同)

大阪市で米国の黒人男性暴行死事件を巡り、メッセージを掲げるデモ行進の参加者=6月(共同)

  • 大阪市で米国の黒人男性暴行死事件を巡り、メッセージを掲げるデモ行進の参加者=6月(共同)
 米国発の黒人差別反対運動のスローガン「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」。運動が世界的に広がり、頻繁に取り上げられる中、どのような日本語訳が妥当かで議論が起きた。メディアでは「黒人の命も大事」「黒人の命は大切」が多く、「黒人の命こそ大事」も。専門家によると、問題の捉え方、理解の仕方によってふさわしいと思う訳は異なる。考えることで、私たちが持つ内なる偏見や差別に目を向ける契機になるという。
 このスローガンは2013年、米フロリダ州で黒人高校生を射殺した自警団員が無罪となった事件を機に生まれた。徐々に広まり、黒人以外のさまざまな人も叫ぶようになった。
 「命も…」と「命は…」は1文字違い。上智大の飯野友幸教授(米文学)は「どちらも誤訳ではないが、誤解を生みかねない」と指摘する。「は」にすると「黒人の命だけが大事」と読める余地がある。「も」とすると、白人至上主義者らが論点をずらすために使う「オール・ライブズ・マター(全ての命が大事だ)」との意味の違いが曖昧になるという。
 飯野氏は「訳によって大きくニュアンスが異なり、運動への見方がずれる」と指摘。「黒人の命はどうでもいいはずがない」または「…どうでもよくはない」という訳を提案した。
 「黒人の命を粗末にするな」との訳を提唱するのは、京都大の竹沢泰子教授(文化人類学)。「奴隷制の歴史に始まり、今も不必要に殺され続ける黒人の厳しい現実は『大事だ』では伝わりにくい」と話す。
 両氏は、これを機に日本人にありがちな差別意識に向き合おうと強調する。竹沢氏が例示するのは、初対面の黒人に「スポーツ得意でしょ」「ラップやレゲエ好き?」と尋ねること。偏見であり、相手を傷つけ得る。
 外国人だけでなく障害者、性別による差別などもある。「同調圧力の強い日本では、偏見や差別に対して抗議しづらいが、仲間と共に沈黙を破ることが第一歩だ」とも指摘した。
 部落差別問題に詳しい川口泰司・山口県人権啓発センター事務局長は、日本各地であったBLMデモに、日本人が多数参加したことに希望を感じたという。「黒人差別を許さず、自分自身の問題だと考えた人たちが参加した。他の人権問題にも声を上げる社会になれば」と期待を込めた。
(共同)

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