「ライフラインつながねば」 武漢にとどまったイオン日本人駐在員の決意

2020年7月21日 06時00分

中国武漢市のイオンモールで14日朝、開店を待つ大勢の買い物客

 新型コロナウイルスの感染拡大で都市封鎖が行われた中国湖北省武漢市で、イオングループの責任者として現地に残った杜若(かきつばた)政彦さん(51)と南慎一郎さん(45)が本紙の取材に応じた。日本政府は邦人の帰国便を手配したがそれには搭乗せず、現地の従業員とともに食料や支援物資を通じて現地の生活インフラや医療従事者を支えた体験を語った。(中国湖北省武漢市で、白山泉、写真も)

◆客が消えたスーパー 宅配に注力

 昨年12月31日、武漢市当局が原因不明の肺炎患者がいると発表。1月になると春節休暇の帰省ラッシュで人が動き、感染は瞬く間に拡大した。杜若さんは「ウイルスのことは何も分からない。伝わってくるのは病院がパンクしている事だけだった」と当時の不安な状況を振り返る。
 武漢市当局は1月23日、人の出入りを遮断して感染を封じ込めようと都市封鎖に踏み切った。その後は「普段は6元(約90円)の白菜が一部では90元(約1400円)に暴騰した」と杜若さん。ただ、イオンは普段の値段で販売。こうした営業姿勢を知った卸売業者が野菜を優先的に出荷してくれた。

都市封鎖期間も武漢に残って指揮を執ったイオングループの杜若政彦さん(右)と南慎一郎さん=13日、中国・武漢市で

 武漢市は一般市民の外出を規制するなど人の動きをさらに制限。スーパーからほぼ客の姿が消え、イオンは居住区への野菜の宅配に注力した。

◆「現地社員を残して帰れない」

 SNSでは入院できずに泣き叫ぶ人のうわさなども耳に入った。従業員らは感染への不安を抱えながらも連日出社。健康に不安を抱える日本人社員は政府チャーター便で帰国したが、それぞれスーパーとモールを管理する杜若さんと南さんは武漢に残った。「現地社員やテナントの従業員を残して帰れない」と南さん。杜若さんは「ライフラインをつなぐために残らなければいけない」と使命感を語る。

武漢のイオンモールで友人や家族と食事を楽しむ買い物客

 過酷な環境で働く医療従事者への支援物資ではテナントが力を貸してくれた。看護師が防護服を着たまま床に寝ていると聞けばマットレスを、寒い中で働いていると聞けばダウンジャケットを集めてくれた。3月になると中国各地からも支援物資や応援人員が届くようになり「感染者減や患者の退院のニュースを聞くようになった」(南さん)。
 4月8日には都市封鎖が解除され、5月には全市民対象のPCR検査を実施。南さんは「安心感が生まれ、楽しもうとする気持ちが戻った」と話す。
 今、店内は買い物客でにぎわう。市内の店舗では増床や大規模飲食店街のオープンを計画。杜若さんは「武漢の人は本当にみんなつらい思いをした。偏見も残っているかもしれない。その分だけ強く発展してほしい」と話した。

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