下町の紙芝居が存続ピンチ 上演の女性「地域の風景残したい」 

2020年7月21日 14時00分

永田さんから街頭紙芝居を受け継いだじゃんぼさん。新型コロナ対策でフェースシールドをつけて紙芝居を続ける。丸いシールは駄菓子のメニュー=15日、東京都江戸川区で

 東京の下町で続けられている昔ながらの街頭紙芝居が、存続のピンチに陥っている。紙芝居道具を保管している場所が取り壊されるかもしれないからだ。地元の子どもたちにとって街頭紙芝居は日常の一コマになっており、上演する女性は「地域に根付いている風景を残したい」と新しい保管場所を探している。(加藤健太)

◆道具保管場所の取り壊しが浮上

「最後の街頭紙芝居師」と呼ばれた永田為春さん=東京都江戸川区で(昨年6月撮影)

 江戸川区では、最後の街頭紙芝居師と呼ばれた永田為春ためはるさん(92)が拍子木を鳴らして歩き回り、上演を続けてきた。高齢のため8年ほど前に引退したが、永田さんの迫真の演技に魅了された「じゃんぼ」こと岡本理世さんが受け継いだ。「永田さんが守ってきた文化をつなぎたい」と毎週街頭に立っている。
 自転車の荷台に載せて作品を抜き差しする「舞台」は、駄菓子を詰める引き出しが組み合わさり、はげた塗装が歴史を感じさせる。自転車も年季が入り、「ギーギー」と音を立てながら走る。これらの紙芝居道具は江戸川区の永田さん宅に置かれ、じゃんぼさんが上演の度に取りに立ち寄っていた。

永田さんから受け継いだ年季の入った拍子木=東京都江戸川区で

 今年5月、1人暮らしをしていた永田さんがグループホームに入った。認知症もあり、1人で健康管理をするのが難しくなっていた。街頭紙芝居の稼ぎで建てた2階建ての1軒家はからっぽになり、土地の所有者の意向で取り壊す可能性が浮上している。

◆6月に再開

 豊島区にあるじゃんぼさんの自宅からは15キロ離れ、重たい舞台を載せた自転車で行き来するのは難しい。「永田さんの紙芝居で育ち、子や孫に見せようと立ち寄ってくれる大人もいる。でも、紙芝居道具の保管場所がなくなれば上演を続けられない」。江戸川区で頼れるつてはなく、打開策は見いだせていない。

紙芝居道具を保管している永田さん宅(後方)から上演場所へ向かうじゃんぼさん =東京都江戸川区で


 じゃんぼさんは手作りのフェースシールドなどを身に着け、新型コロナウイルスの感染拡大で中止していた紙芝居を6月に再開した。常連の子どもたちは遊ぶ手を止めて、わっと群がった。その様子を思い起こし「待っていてくれた気がした」とうれしそうに語る。
 新しい保管場所については「ガレージの一角のような雨風がしのげる場所が望ましい」と江戸川区民らに協力を呼び掛ける。区も公共施設などで預かれないか検討している。

  ◆江戸川区の街頭紙芝居 永田為春さんは国立博物館「昭和館」が2012年に開催した特別企画展で「最後の街頭紙芝居師」と紹介された。テレビの普及などで同業者が姿を消しても路上に立ち続けた。意思を継いだじゃんぼさんは、江戸川区の都立篠崎公園近くの路上などで毎週水曜日に上演している。


 

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