EU復興基金合意で南北に溝 相互不信があらわに

2020年7月22日 06時00分
 【ローマ=竹田佳彦】欧州連合(EU)は21日の首脳会議で、新型コロナウイルスで打撃を受けた加盟国の支援策として復興基金の設立に合意した。ただ、会期を大幅に延長した交渉では、独仏主導への不満や加盟国間の相互不信などEU内の溝の深さがあらわになった。

21日、ブリュッセルで、EU首脳会議の詰めの協議に出席したオランダのルッテ首相㊧とミシェルEU大統領㊥、ドイツのメルケル首相=ロイター・共同

◆オランダなど北欧の倹約派が異議

 EUは全加盟国の同意が原則のため、首脳会議では基金の原案を提示した独仏が連帯を理由に同意を迫った。しかしオーストリアやオランダ、北欧諸国など財政規律に厳格な国々が「倹約派」グループを組み、補助金枠の削減と融資枠の拡大を要求した。
 多額の共通債務を抱えることへの懸念からで、オランダのルッテ首相は「(反対は)欧州のためだ」と、他の加盟国の声も尊重するよう求め、最終的に補助金枠は大幅減となった。
 オランダの有力誌は5月、優雅にカフェや水遊びを楽しむ南欧系の男女と、勤勉に働く北方系の金髪の男女を対比する絵を掲載。バラマキ型の財政運営をしてきたイタリアなどに対し、倹約派の視線は厳しく、今回の交渉では補助金の交付を受ける国に財政改革を求めた。
 オーストリアのクルツ首相は1回目の延長がされた19日、「EUは独仏が提案し、他国が追認するやり方に慣れていた」と、大国主導の意思決定に異議を唱えた。今回の首脳会議は、EU内のパワーバランスの変化を印象づけた。

◆支援求める南欧からは不満

 一方、支援を求める南欧では、今回の合意に不満の声が出ている。イタリアの極右野党「同盟」書記長のサルビーニ前内相は20日、ツイッターで「EUは先人の夢を裏切っている」と書き込み、非常時にまとまれず統合の理念に反していると皮肉った。新型コロナの流行初期、伊政府は医療物資の支援を欧州各国に求めたが、その際も加盟国とEUの動きは鈍かった。
 新型コロナの影響で、イタリアの首都ローマでは、古代遺跡でも観光客の姿はまばらだ。ホテルで働くシモーネさん(38)は「動きが遅すぎる。緊急時にEUが助けにならないことがはっきりした」と憤る。欧州政治に詳しい仏ロベール・シューマン財団のパスカル・ジョアナン氏は「共通債務は初めての取り組みで、難航するのは当然だろう」と指摘する。

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