母を主人公に八王子空襲描く 市内の不動産業、前野さんが小説化

2020年7月22日 07時04分

母を主人公に小説を出版した前野さん=八王子市役所で

 八王子市の不動産業、前野博さん(71)が、二年前に九十六歳で亡くなった母の貴美さんを主人公にした小説「キミ達の青い空−八王子空襲から七十五年−」を出版した。八王子空襲や米軍による列車銃撃事件など、先の戦争に関する地元の史実を織り交ぜており「子どもたちにも知ってほしい」と、市を通じて市内の全小中学校など計百七校に寄贈した。(布施谷航)
 貴美さんは一九二一年、八王子生まれ。戦前は理髪店で働き、戦後は夫の洋服店を手伝うかたわら、菓子店を営み、前野さんを含む六人の子どもを育てた。
 前野さんは「母の記憶をとどめたい」と小説の執筆を始め、三年かけて書き上げた。老齢になった母の姿と、戦時中の様子を並行して描いている。貴美さんが実際に経験した八王子空襲や、疎開児童との触れ合いの様子を描写。このほか、史料を読み込んで、終戦直前の四五年八月五日、米軍の機銃掃射で多数の民間人が死亡した「湯(い)の花トンネル列車銃撃事件」も取り上げた。
 貴美さんは生前、「命があってよかった。戦争はやったらだめだ」と繰り返し話していたという。その思いを本に込めた前野さんは「身近で実際に戦争が起きていたことを、若い人にも感じてほしい」と願う。市役所を訪れて目録を贈り、受け取った石森孝志市長は「子どもたちにとって、戦争を知るいい機会になる」と謝意を示した。
 本はA5判三百四十六ページ。定価は千二百円。問い合わせは、揺籃(ようらん)社=電042(620)2615=へ。
<八王子空襲> 1945年8月2日未明、約170機のB29が八王子市周辺に襲来。2時間で67万個の焼夷(しょうい)弾が落とされ、約450人が死亡。民家など1万4000戸が焼け落ち、市中心部は壊滅状態になった。
<湯の花トンネル列車銃撃事件> 1945年8月5日午後0時20分ごろ、八王子市裏高尾町の中央線「湯の花トンネル」に差しかかった新宿発長野行き列車を、米軍のP51戦闘機数機が機銃掃射した。P51は硫黄島から飛来し、二宮駅(神奈川県)や八王子駅を襲った後、この列車を狙ったとみられている。

関連キーワード

PR情報

東京の新着

記事一覧