コロナ対策費 特例で介護報酬に上乗せ

2020年7月22日 07時17分

要介護4、85歳女性のデイサービス(地域密着型)の6月分利用料請求書。サービスの内訳には9回の利用の1回分が2段階上の「5時間以上6時間未満」で請求されている。

 デイサービス(通所介護)を3時間しか使っていないのに、利用料の請求は5時間分−。施設の新型コロナウイルスの感染防止対策にあてるとして、厚生労働省が6月から特例措置で始めた介護報酬の上乗せに利用者らから疑問の声が相次いでいる。上乗せ分は利用者も負担しており、「感染防止の費用は全額公費で負担するべきだ」などと不満が渦巻く。 (五十住和樹)
 「利用者が使っていない時間まで介護報酬を認めるなんて、国が架空請求を勧めるようなもの」。公益社団法人「認知症の人と家族の会」新潟県支部代表の金子裕美子さん(68)は憤る。
 同県上越市に住む要介護4の八十代男性は六月に利用した八回のデイサービスのうち三回分で、実際より一日に二時間分多く請求された。月額四百四十円の上乗せ。事業所から同意書へサインを求められ、妻は「世話になっているから」と応じたが、どうにも納得できず金子さんに相談した。
 要介護4で、週二回、三〜四時間の地域密着型デイサービスに通う名古屋市の八十五歳の女性も六月に利用した九回のうち一回、実際より多く請求された。
 介護保険で介護サービスを提供した事業者は保険者の市区町村に介護報酬を請求。利用者は所得に応じ、一〜三割を支払う。
 特例措置は、デイサービスや通所リハビリなど通所系サービス、ショートステイなど短期入所系サービスが対象。厚労省によると、「コロナが収束するまでの時限的措置」として、利用者側の同意を得ることを条件に、実際のサービス時間よりも事業者が上乗せして請求することを認めた。
 例えば、通所系サービスでは要介護度やサービス提供時間で細かく定められている報酬単価の区分を一定の回数分、二段階上の区分で請求できる。要介護3の人に「二時間以上三時間未満」(単価は三千四百七十円)の区分でサービスを提供すると、特例では月一回まで「四時間以上五時間未満」(同四千九百五十円)の区分で請求できる。
 ただ、事業者が上乗せ請求すると、利用者の自己負担も上がる。介護保険では要介護度別にサービスの支給限度額が決まっており、上限ぎりぎりまで使っている人は上乗せで限度額を超える可能性がある。超えた分は全額自己負担になる。
 このため、名古屋市のある事業所では「限度額を超えない利用者にのみ上乗せし、超える人には上乗せしていない」という。同様のケースは少なくないとみられ、金子さんは「上乗せされる人とされない人で不公平感が出る。利用者を線引きするのは、良心がとがめると嘆く事業者もいる」と懸念。「利用者に負担させられない」と全く上乗せしていない事業者もいる。
 緊急事態宣言が出た四〜五月、多くの事業所が縮小や休業。厳しい経営が続いており、消毒液など感染防止対策の出費もかさんでいる。苦しい中でもサービスを継続する事業者に感謝する利用者や家族は多い。
 厚労省は「感染予防を尽くした施設に行くことは利用者にもメリットがある」と負担に理解を求める。
 これに対し「認知症の人と家族の会」は先月、「利用していないサービス分まで負担しろというのは理不尽」などとして撤回の緊急要請文を加藤勝信厚労相あてに提出。東京などの介護家族や事業者などのグループも要請した。同会代表理事の鈴木森夫さんは「コロナがいつまで続くか分からない」として利用者負担が膨らむことを危惧。「感染防止の費用は公費で負担してほしい」と話す。

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