チケットは、晴海フラッグは、ホテル・旅館業界は…見通せぬ五輪にどうする

2020年7月23日 11時34分

東京五輪・パラリンピックの選手村として使われるマンション群「晴海フラッグ」。大会延期により、マンション購入者への引き渡しも遅れる=東京都中央区の臨海地区で


 新型コロナウイルスの感染拡大により、1年後の7月23日に開幕が延期された東京五輪。チケットの購入者や選手村のマンション購入者、宿泊業界などに影響が出ている。コロナの収束が見通せない中、市民は期待や戸惑いを口にする。

◆「チケットは記念に持っていたい」

 五輪のチケットは約450万枚が販売済み。大会組織委員会は来年の大会でも有効とする一方、今秋以降、希望者への払い戻しに応じるという。
 家族3人分のラグビーのチケットを確保した東京都国分寺市の高校3年斎藤雅文さん(17)は「開催すると言っている以上、払い戻しはしない」ときっぱり。小学2年でラグビーを始めた。「延期決定時は『来年ならいいか』と思っていたが、今は中止にならないか心配。世界トップのプレーを生で見られる機会なので、ぜひやってほしい」
 目黒区の社団法人代表石坂晏敬さん(44)も、購入したカヌーのチケットの払い戻しは考えていない。「5歳の長男に五輪の雰囲気を体験してほしい」と願う。
 国立市の会社員藤井永子さん(55)は体操などのチケットを購入。「観戦できるのが自分一人になっても行きたい。感染拡大が続いていれば、無観客でも開催してほしい」
 一方、国分寺市の塾経営幡野雄一さん(33)は「世界の感染状況を見ると、選手らの入国を世間が許さないのでは」と開催に悲観的。サッカーのチケットを自分用に買っており、「中止になっても記念に持っていたい」と話した。(三輪喜人、砂上麻子、竹谷直子)

◆選手村マンション「1年も遅れるなんて」

 東京都中央区の新築マンション群「晴海フラッグ」に設ける選手村。大会延期により、2023年春予定だったマンション購入者への引き渡しが1年程度遅れる。
 中部地方の70代の男性は、購入契約を近く解除する予定だ。「1年も遅れるなんて、本来は売り主が補償すべきだ」と憤る。
 都心で働く孫のためにと昨年夏、広さ約100平方メートルの1室を約8500万円で購入した。今年6月に売り主から届いた文書では、契約解除した場合、手付金の約850万円は返金されると記してあった。「契約解除したいならどうぞ、という紙1枚で、説明会の予定もない。書類で顔をはたかれた気分だ」と不満を募らせている。
 契約破棄を検討しているのは、1室を約7000万円で購入した大田区の30代の男性会社員。「人生設計が狂ってしまった」と頭を抱えている。
 入居後、開校する小中学校に娘2人を通わせる予定だった。しかし、五輪延期で入居も開校も遅れることに。「4歳の次女の進学に合わせて計画したのに…。1年だけ今の校区の学校に通わせ、転校させるのは娘に申し訳ない」(臼井康兆、原田遼)

◆悲痛なホテル・旅館「何とか開催にこぎ着けて」

 観客や大会関係者が宿泊することになる都内のホテルや旅館からは、「何とか開催にこぎ着けて」と悲鳴に近い声が上がる。
 「今夏の予約は全部、春先にキャンセルになりました。本当なら連日満室だったと思うと…」。足立区の和風旅館「雫」の従業員山本京子さん(68)は寂しそうにつぶやいた。
 3年前、数億円をかけて全22室のリフォームを実施。Wi―Fiや翻訳機をそろえた。訪日客の増加で経営は順調だったが、新型コロナの感染拡大で3月ごろから宿泊客は急減。五輪延期が決まると、予約は次々に消えた。五輪絡みの予約は「キャンセル不可」としていたが、緊急事態だとして全額返金に応じた。
 最近は客が1日に1組か2組。ゼロの日もある。山本さんは「『来年こそ』とは思うけど、正直不安の方が大きいですね」。
 別の大型ホテルは、組織委の依頼で今夏の大会関係者用に数100室を確保していたが、キャンセルに。延期開催が決まり、「来年も同じ規模で」と再び依頼があったが、その後は具体的なやりとりがないという。(岡本太)

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