海外の「不安」高まれば中止も コロナ対策、具体案見えず<東京五輪あと1年>

2020年7月23日 05時50分

東京五輪の開幕まであと1年となった国立競技場(奥)と五輪マークのモニュメント横をマスク姿で歩く人たち=22日、東京都新宿区で


 新型コロナウイルスの収束が見通せない中、来年夏に延期された東京五輪は開催できるのか。国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会は競技日程と施設を確定させたものの、課題が山積している。中止や再延期も含め、さまざまなシナリオを探った。(原田遼、臼井康兆)

◆あらゆる五輪野中で最も困難な大会

 「過去のあらゆる五輪の中でも最も困難な大会になる。壮大な、新しい社会実験のようなものだ」
 2016年東京五輪招致にかかわり、五輪ビジネスに詳しい原田宗彦・早稲田大教授(スポーツ経営学)はこう表現する。
 課題は外国人選手らの入国や検疫、選手村や観客席の「三密対策」、ボランティア確保や追加コスト削減など山積している。
 IOCのバッハ会長は観客を減らす可能性に言及しているが、無観客開催や開会式の規模縮小には難色を示した。
 組織委は経費を抑えるための大会簡素化について検討中だが、公表は秋になる。感染症対策についても秋以降に検討するとして、具体策は見えない。
 開催へ最もスムーズなのは、ワクチンが早期に開発されるケースだ。国内では製薬ベンチャーのアンジェスが6月、国内初の治験を開始。英製薬大手アストラゼネカは来月にも日本で治験を始める方向という。

◆ワクチン供給間に合うか不透明

 ただ、ワクチン供給が大会に間に合うか、世界中に行き渡るかは不透明だ。
 プロ野球のコロナ対策連絡会議に参加する三鴨広繁・愛知医科大教授(感染症学)は「入国時の検疫でPCR検査をしても、事前合宿地、選手村や移動車両、会場といろいろな場面で感染リスクがある」と困難さを指摘。「クラスターが発生すれば日本の威信は地に落ちる」と警告する。
 大きな影響を及ぼしそうなのが、日本以上に感染状況が深刻な海外のアスリートの声だ。IOCによると、全体の五輪代表枠のうち、代表選考が終わっているのは55%。来春までに五輪予選の見通しが立たないと出場選手が決まらず、中止が現実味を帯びる。

◆「IOCも中止に傾きかねない」

 組織委幹部は「選手や各国首脳らから安全面への不安の声が巻き起こると、IOCも中止に傾きかねない」と警戒する。
 当初20年の開催に固執していたIOCは、今年3月中旬に一部の五輪委員会や選手がボイコットをにおわすと、延期に急変した。
 原田教授は「多くの選手や競技団体にとって、五輪は国やスポンサーの支援を引き出す生命維持装置。何としてでもやってほしいはずだ」としつつ、「テニスやゴルフなど、他に大きな収入源のあるプロ選手から不参加の声が出るかもしれない」と懸念する。

◆「開催」と「中止」上回る「再延期を」

 共同通信が今月中旬に行った全国世論調査では、「開催すべき」(23・9%)や「中止すべき」(33・7%)を上回ったのが、「再延期すべき」(36・4%)という回答だった。
 しかし、IOCや組織委は再延期を否定する。22年2月の北京冬季五輪と重なり、日程や施設の調整もやり直しになる。組織委の職員や事務所を維持する経費もかかる。
 森喜朗会長は今月17日、「一生懸命に投資したものが完成しなければ、無駄になる」と来年開催への悲観論をけん制した。

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