<環境視点>海に優しく魚にも優しく エコな釣り具が登場

2020年7月23日 07時48分

タングステン製のルアーを説明する池谷さん=名古屋市で

 きょうは「海の日」。海の恵みに感謝する、島国・日本ならではの祝日だ。この夏は新型コロナウイルスの影響で海水浴場の開設中止が相次ぐ一方、各地の海岸に多くの釣り人が繰り出している。近年、プラスチックによる海洋汚染も問題になる中、水中で微生物に分解される釣り具も登場。3密を避けながら、海や釣り場の環境にも目を向けて楽しみたい。 (平井一敏)
 伊勢湾に面した愛知県知多市の新舞子マリンパーク。梅雨の晴れ間となった今月中旬、柵に二メートル間隔で巻かれたテープを目安に互いに距離を取り、多くの人が釣り糸を垂れていた。
 この場所では今月、釣具店などでつくる日本釣振興会(東京)の愛知県支部がカサゴやヒラメなどの稚魚八千五百匹を放流。釣り場の水中清掃にも毎年取り組んでいる。三カ月ぶりに訪れたという岐阜県関市の会社員男性(29)は「ここはほとんど、ごみも落ちてなくて気持ちいい」と笑顔で話した。

マスク姿で釣りを楽しむ人たち=愛知県知多市で

 支部長の高橋政治さん(73)によると、釣り人のごみが原因で閉鎖された釣り場もあるといい、「ずっと釣りを楽しむために環境を守ることが大事」と話す。
 「環境に優しい釣り具が一気に増えてきた」と話すのは名古屋市緑区の釣具店「イシグロ鳴海店」の池谷貴之店長(43)。釣り具には従来、海洋ごみで問題となっているプラスチックや鉛などを使ったものが少なくないが、現在、水質や生き物に悪影響を与えない商品が続々と出てきている。

◆分解性ルアー

 プラスチック製が主流で、根掛かりなどで水中に放置されやすいルアー(疑似餌)は、生分解性素材の製品が登場。水中に残っても、微生物が水と二酸化炭素に分解する。
 埼玉県桶川市のメーカー「ウエルエフ」が二〇〇九年から展開する「エコギアアクア」シリーズもその一つ。東京海洋大との共同実験で、海水中では全長八センチの虫形ルアーが四年ほどで完全になくなった。魚が間違えて食べても、体外に排出されて影響はないといい、開発担当の渡辺光一さん(35)は「より環境に優しい商品を目指したい」と意気込む。

生分解性素材のルアー(ウエルエフ提供)

水中で分解されたルアー(神奈川県・芦ノ湖で108カ月後)

◆鉛使わず重り

 ほとんどが鉛製だった重りは鉄や亜鉛、すず製などに。鉛は安くて加工しやすい半面、有害物質が溶け出すことが問題となっているからだ。愛知県清須市のメーカー「ボーズレス」はレアメタル(希少金属)のタングステン製の重りを兼ねたルアーを開発。鉛より一・六倍重くて潮に流されにくく、タイなどの大物が好む小魚に似せた形にできる。販売価格は鉛製品の二倍ほどだが、一二年の発売以来売り上げは右肩上がりといい、水谷明良社長(45)は「付加価値を高め、環境保全につなげたい」と語る。
 日本釣用品工業会(東京)も〇七年から、これら環境保全の観点に立った釣り具を認定し、独自のマークでPR。イシグロ鳴海店で生分解性素材のルアーを手に取っていた名古屋市の会社員近藤寛さん(47)は「小学生のときから釣りが好き。いつも楽しい思いをさせてもらっているから、なるべく環境に優しい道具を選んでいる」という。
 釣り場の環境に詳しい東京海洋大の奥山文弥客員教授(59)は「釣りを通して自然や命の尊さに敏感になって」と話す。

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