人間以上!? 複雑な世界 すみだ水族館 ペンギン相関図

2020年7月24日 07時12分

人間以上に複雑な関係性を築いているペンギンたち

 ペンギン同士の関係性は人間並み、いや人間以上に複雑かもしれない−。墨田区の「すみだ水族館」では、飼育するペンギンの相性や性格を示した「すみだペンギン相関図2020」を公開している。矢印や写真を使って説明しているが、1羽ごとに関係する個体が複数に上り「ややこしい」「一目見て分からない」と驚きの声も。なんとなく分かるようで分からない、複雑で奥深いペンギンの世界に迫る。

◆ダメ夫、モテ女王…十「鳥」十色の恋愛模様

すみだペンギン相関図を説明する飼育スタッフの高嶋悠加里さん

 相関図に登場するペンギンは五十五羽。関係性が多様すぎるため、すべて紹介するのは難しいが、すみだ水族館で生まれたメスの「たいこ」をめぐる人間模様ならぬ鳥模様に注目する。たいこは、ダメ夫の「パイン」を更生させた良妻として相関図に登場している。
 同館では卵を産んだペアを「夫婦」、付き合っている関係を「カップル」として記しているが、もともとパインは別のメス「イチゴ」と夫婦だった。イチゴはパインとの間に産んだ卵を日々温めていたが、パインは育児を全く手伝わなかった。揚げ句、イチゴが目を離した隙に卵を蹴っ飛ばすという愚行も。飼育スタッフからも「パインはポンコツ」と烙印(らくいん)を押される始末。結局イチゴは別のオス「はなび」に心変わりして、パインは失恋した。

◆見事なキャラ立ち

事細かに書かれたペンギン相関図

 独り身となったパインを好きになったのが、たいこだった。同館で生まれたこともあり、娘同然のたいこにスタッフは「あんな悪い男やめなよ」と説得。しかし、たいこのパインへの思いは冷めることなく、パインとの間に卵を産んで夫婦となった。
 スタッフはたいこが育児で悩むのではと心配したが、パインは生まれ変わったように卵を抱いて温めるように。たまに育児に飽きた目をしている姿が目撃されているが、たいこに尽くす姿勢は変わらず「良き夫」として励む。一方、たいこはパインと夫婦になった後、男性スタッフを無視するようになってしまった。

餌をもらうペンギンたち

 同館のペンギンの中で、パイン以上にモテるのはオスの「アケビ」。アケビはメスへのアピール声が魅力的なイケボ(イケメンボイス)。妻は「モテ女王」と評される「フジ」で、二羽の間には、新人スタッフに厳しいオスの「ちゃんこ」がいる。アケビは「クッキー」と「ラムネ」からも求愛されたが、妻一筋を通しているという。
 相関図にはほかにも、ペンギン夫婦同士のご近所トラブルや同性カップル、飼育スタッフとの相性などが盛り込まれている。

◆個体の特徴記す「履歴書」から発展

スタッフとの関係も相関図に登場する

 相関図は二〇一八年に初めて制作し、今回は二作目。昨年八月時点で飼育していたペンギンの関係を記している。ほかの水族館などに引っ越したペンギンもいるため、現時点の飼育数は四十八羽。今年「おもち」など子どもも生まれており、関係性は日々変わっているという。
 同館が開館した二〇一二年、ペンギンの飼育スタッフ高嶋悠加里さん(33)らがスタッフ同士の引き継ぎのため、個体の生活記録を紙に書き出していたのが始まり。群れで生活するペンギンは、身体検査で一羽だけ別のケージに入れると寂しがるため、ペアにする。相性が悪くないか考慮する必要があり、個々の性格なども書き留めていた。
 「スタッフは女性が多く、恋バナをするみたいに『あの子振られちゃった』『あいつ浮気してたよ』なんて話しながらやっていた」と高嶋さん。当初は履歴書と呼んでおり、ペンギンを見分けることが難しい新入りスタッフも履歴書を参考にしながら二年ほどかけて名前を覚えるという。周囲の職員らから面白いと評判になり、相関図として公表することにした。
 ペンギンの世界で多様な関係性が生まれることについて、高嶋さんは「群れにボスがいないという習性が関係しているかもしれない」と話す。今後、三作目を作るかは未定だが「ペンギンは声をかけるとその人間を覚えてくれる。相関図から個々の個性を知って、友達になってあげてほしい」と呼び掛けている。
 文・天田優里/写真・市川和宏
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