「接触」不可欠なのに… コロナ対策 戸惑う視覚障害者

2020年7月24日 07時36分
 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、できるだけ接触を避ける生活様式が広がる中、視覚障害者から戸惑いの声が上がっている。ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保やマスクの着用などで、視覚以外の感覚にも頼りにくくなっているからだ。当事者らは「触らないと分からない人もいることを知って」と理解と支援を求めている。 (長田真由美)

触る展示の一つ、トーテムポールを触る広瀬浩二郎さん=大阪府吹田市の国立民族学博物館で

◆人の手借り歩行/物の場所確認

 「とにかく状況が分からなかった」
 視覚障害者を支援する社会福祉法人「名古屋ライトハウス」の相談員で、自らも全盲の藤下直美さん(46)は、新型コロナの影響で一変したスーパーやコンビニの環境に戸惑った。
 レジにはビニール製の間仕切りがあり、相手の声が聞こえづらい。間隔を空けて並ぶ目印のテープが床にはってあるが「どのくらい空けているかも分からない」。列から外れたり、列に気が付かずレジまで行ったりしたことも。ほかの客に「前へ進めばいいですか?」と尋ねるなどしている。
 全盲で、国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎さん(52)は「視覚障害者にとって『濃厚接触』を避ける今の風潮はつらい」と話す。
 人の手を借りて誘導してもらったり、物の場所を確認したり。視覚障害者は日常的に人や物に触れる。手で触るだけでなく、体全体の感覚を動員し体感。顔も周囲の状況をキャッチするアンテナの一つで、風の吹き方や壁が迫る感覚をつかんでいる。だが、マスクで顔が覆われると、その感覚が鈍る。行き慣れた通勤路を間違えることもあった。
 広瀬さんは長年、博物館で直接展示物に触れる「触る展示」に取り組んできた。集大成として九月に企画した特別展も来秋に延期に。「感染予防は大事だが、触らないと分からない人がいることも知ってほしい」
 障害者の社会参加を支える一般社団法人「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」が四月に行ったアンケートでは、回答した視覚障害者七十一人の六割が「買い物やマスク、健康管理など生活面で不便を感じる」、半数が「人とのコミュニケーションで不安や心配を感じる」と答えた。
 自由回答では、「ガイドヘルパーと散歩に行くのも、感染対策で遠慮した」「目に近づけないと、商品が見えない。思った商品と違うと棚に戻すが、周囲から見たら不快だろうと感じる」という声もあった。

◆立ち往生していたら「お困りですか?」

 困っている視覚障害者を見掛けたら、どんな支援ができるのか。名古屋市総合リハビリテーションセンターの自立支援部長の田中雅之さん(47)らに聞いた。
 まず、マスクをする、対面では話さないといった日常の感染予防対策をした上で、今いる場所が分からず、立ち往生している人がいたら、「お困りですか?」などと声を掛けるといい。もし、気が付かなかったら軽く肩をたたく。白杖(はくじょう)や腕を引っ張らない。
 「気を付けてほしいのは、声を掛けるタイミング」。動いている時だと、驚いて、目的地が分からなくなってしまうこともあり、立ち止まった時に。案内時は、肘の上や肩に手を置いてもらい、信号やレジなどでは状況を具体的に言葉で説明する。
 ただ、視力や視野などの障害の程度はそれぞれで、必要な支援も異なる。相手に尋ね、対応する。ちょっとした工夫で見えやすくなる人も多い。店や事業者には、床などにはる目印のテープをはっきりした色にする、案内表示の文字を大きくする、目立つ場所に置くといったことを推奨する。

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