「特別養子縁組」どう変わった 法的親子関係、より多くの子に

2020年7月24日 07時36分
 六歳未満の子が対象だった特別養子縁組の対象が四月の民法改正で、原則十五歳未満に引き上げられた。縁組を望む養親の手続きの負担も軽減され、制度の利用が進むことが期待されている。改正の背景と意義を整理した。 (今川綾音)

◆年齢上限、実親の同意…成立要件を緩和

 特別養子縁組は実親との法的関係が残る普通養子縁組とは異なり、戸籍上も養父母が実親扱いとなる。親子の関係を安定させることができ、子どもの福祉を守ることを重視する制度だ。
 厚生労働省によると、生まれた家庭で育つことができない「要保護児童」は約四万四千人(二〇一八年度)。同省はこうした子どもたちの養育の場を児童養護施設などから家庭的な環境に移していく方針だが、里親などに委託された子どもは七千百四人(同)。特別養子縁組となると、成立件数は六百二十四件(同)にとどまる。
 特別養子縁組の成立を妨げる要因として指摘されてきたのが、実父母の同意が必要な点と、子の上限年齢が低すぎるという二点だ。同省の養子制度の研究会が一六年に実施した調査によると、「要件が厳格」などの理由で一四、一五年度に制度を利用できなかった二百九十八件のうち、二百五件が「実父母の同意」、四十六件が「上限年齢」を理由とするものだった。
 制度利用の壁となっているこれらの点を検討する民法改正の議論は一六年にスタート。今年四月に改正された=イラスト。
 縁組成立まで可能だった実親の同意撤回は、同意から二週間経過後はできなくなった。法改正議論に関わった早稲田大法学学術院の棚村政行教授(66)は「子への心情的な負い目から直前に翻意する実親もいる。縁組できる見通しで赤ちゃんを二百五十日以上育てて関係を深めたのに、一度は同意した実母が撤回し、実らなかったケースもあった」と指摘。「縁組できないかもしれない、と不安を抱えながら子を育てる養親を減らすことができる」と解説する。
 対象年齢は十二、十五、十八歳未満と三案が検討された。「実子同様の関係を築くには小学生までが限界」「実親の同意なしで普通養子縁組が可能」としてそれぞれ十二歳と十五歳を推す声が多かった。だが、児童福祉関係者は「子どもも里親も悩み続け、ようやく決心がついたら十五歳を超えていたというケースもある」と主張。「一件でも救えるケースがあるなら」(棚村教授)と条件付きで十八歳未満が対象となった。
 八年前に二人の里子のうち当時三歳だった下の子とだけ特別養子縁組を成立させた女性=関東地方、五十代=は法改正を歓迎する。当時は縁組申立時に六歳未満という年齢制限があり、六カ月以上の養育実績も必要だったため、里子に迎えた時点で五歳だった上の里子との縁組は間に合わなかった。「二人の里子が違う立場になることにためらいがあった。救われる家庭はあるのでは」
 養子縁組の手続きを手がける山下敏雅弁護士(41)は「法律上の親子関係が続けば、実親やその親族の借金の相続や扶養に関して、子に連絡が来る可能性がある。特別養子縁組によって、そうした将来の不安から解放され、安定した人生を送れる子もいる」と評価。棚村教授は「より多くの子が安定的で永続的な法的親子関係を築けるようになれば。社会が血のつながっていない親子を認め、受け入れていくことも大切だ」と話している。

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