Go To除外され、浅草の旅館「こうなったら、やけのやんぱち」

2020年7月25日 05時50分

客足が途絶えている東京・浅草の旅館「浅草指月」

新型コロナウイルス対策の観光支援事業「Go To トラベル」は、感染拡大防止を理由に東京発着の旅行を除外して始まった。都内の宿泊施設からは「商売が成り立たない」と、苦境を訴える叫びが上がっている。(梅野光春)
 「この仕事を60年やってきたが、こんなに苦しいのは初めて」

新型コロナウイルス感染拡大の影響について話す旅館浅草指月の飛田克夫社長

 東京・浅草の仲見世通りから歩いてすぐ。旅館「浅草指月しげつ」を営む飛田克夫さん(82)は顔をしかめる。
 旅館は1950年に創業し、飛田さんで3代目。知人の米国人を泊めたのを契機に、45年ほど前から訪日外国人観光客に力を入れてきた。欧米を中心に、宿泊客のほとんどは外国人。和室を中心に、約20室ある館内の表示には英語が目立つ。

◆稼働率90%だった客室は今…

 浅草中心部という好立地もあり「稼働率は90%くらいだった」と飛田さん。今年も10月の紅葉シーズンに予約を入れていた海外客がいた。だが3月からキャンセルが続出し、予約はすべて白紙。緊急事態宣言で休業し、消毒液の設置など感染防止対策を取り入れて先月1日に再開したが「1人もお客さんが来ない」と嘆く。
 飛田さんが思い出すのは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故があった2011年。あの時も訪日客の足が遠のいたが、事態はもっと悪いという。「3・11の時は『東京は安全。日本を元気づけて』とPRしたら、紅葉のころには欧米から来てくれた。でも今は、世界中がコロナにやられていて、手の打ちようがない」
 政府は、観光業を支援しようと、約1兆3500億円を投じ「Go To トラベル」を開始。宿泊代金の35%を割り引くなどの内容だが、新規感染者が相次ぐ東京は除外された。飛田さんが、国内観光客を呼び込もうと考えた直後のことだった。

◆上野の老舗旅館もコロナで閉館した

 「東京の人間はみんな感染症を持ってます、と隔離されたような気分だよ。こうなったら、やけのやんぱちで行き先のない東京の人に、東京の宿に泊まってもらって、憂さを晴らしてもらおうか」
 苦笑しながら語る飛田さん。今年5月には、東京・上野の老舗旅館「水月ホテル鴎外おうがい荘」が77年の歴史に幕を閉じた。「近くでもう1軒、コロナの影響で廃業した旅館がある。いつになれば好転するか分からないから、つらい。早くお客さんをもてなしたい」。声が沈んだ。

関連キーワード

PR情報

社会の最新ニュース

記事一覧