一極集中是正 権限財源を移譲せねば

2020年7月25日 07時37分
 新型コロナウイルスの感染拡大は、東京一極集中のリスクを浮き彫りにした。是正論議はこれまでも繰り返されてきたが、中央官庁が握る権限、財源を地方に移譲しなければ、効果は期待できまい。
 「言うは易く、行うは難し」である。一極集中是正すべし、との訴えは実らぬ日々を重ねてきた。 バブル経済による首都圏の地価高騰を機に一九九〇年代初頭、首都機能移転論議が本格化した。九五年に阪神大震災が起きると首都機能分散の必要性も指摘され、政府の国会等移転審議会は九九年、移転先候補地を「栃木・福島地域」「岐阜・愛知地域」の二カ所に絞る答申をした。
 しかし、巨額の費用に慎重論が相次ぎ、地価の落ち着いた二〇〇〇年代には議論が下火となる。
 安倍内閣は一四年、地方創生の一環として政府関係機関の地方移転を掲げたが、中央省庁で移転方針が決まったのは文化庁の京都移転だけ。それすら工事の遅れにより移転時期は確定していない。
 今年の「骨太の方針」は東京一極集中の見直しを掲げながらも、昨年まであった「政府関係機関移転」の記述は見当たらない。
 人口、企業の東京集中は多くのリスクを生む。交通混雑や狭隘(きょうあい)な住宅、医療、介護、保育の逼迫(ひっぱく)や災害などで、感染症も加わった。地方衰退も東京集中の弊害だ。
 それを是正すべきは論をまたないが、声高に叫んでも本質部分に手を入れなければ真の是正になり得ない。東京集中の本質とは中央官庁が握る権限や財源である。
 例えば、九〇年代の首都機能移転論議は、中央官庁が権限や財源を握ったまま、地方に移転する論議だった。それでは新たな東京が生まれるだけで、一極集中は是正されない。安倍内閣の地方創生も同様に中央集権的だ。
 中央集権に対置されるのが地方分権だ。中央省庁が握って離さない権限や財源を、思い切って地方自治体に移譲してはどうか。人や企業の活躍の場が地方に生まれれば、東京集中の動機は失われる。
 地方分権一括法で国と自治体の関係は対等になったとはいえ権限や財源の移譲は十分とはいえない。省益維持に走る官僚の抵抗が目に浮かぶが、それを抑えるのは政治の役割だ。自治体側も権限を移譲されるにふさわしい体制づくりに努めることが前提だ。
 地方分権による一極集中是正論議が、国会や地方自治体で活発化することを期待する。コロナ禍転じて福となす、としたい。

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