「楽して稼げる」コロナでブローカーが暗躍 中国の「売血」事情

2020年7月26日 06時00分
7月中旬、北京市の総合病院前で、血液が必要な患者関係者に声をかける「血頭」メンバーの男(右端)=坪井千隼撮影(一部画像処理)

7月中旬、北京市の総合病院前で、血液が必要な患者関係者に声をかける「血頭」メンバーの男(右端)=坪井千隼撮影(一部画像処理)

  • 7月中旬、北京市の総合病院前で、血液が必要な患者関係者に声をかける「血頭」メンバーの男(右端)=坪井千隼撮影(一部画像処理)
  • 短期の求人と並び、売血の勧誘(上段)が掲載されている中国のSNS。「血液型不問 400cc 500元」などと書き込まれている=一部画像処理
 中国で血液の違法売買が横行している。新型コロナウイルスの影響で献血が減少し、輸血用血液が急激に不足しているためだ。雇用悪化の影響の直撃を受けた低所得者にとって、「売血」は手っ取り早く金が稼げる手段になっており、違法売血に拍車をかけている。(北京・坪井千隼)

◆病院前で「血頭」が売りさばく

 「血液が必要か? 安全な血液をすぐに用意できるぞ」。今月中旬、北京市内の総合病院前で、若い男が病院から出てきた患者たちに声をかけていた。
 男は中国語で「血頭(シュエトウ)」と呼ばれる違法な血液ブローカー組織のメンバー。この病院では複数の血頭が患者の勧誘をしていた。
 男によると、血頭は血液を買いたい患者や家族を探し血液提供者をあっせんする。1回の血液提供は400ミリリットル。1回当たり患者が血頭に支払うのは2000元(約3万円)。血頭はその中から血液提供者に500元を支払う。つまり差額の1500元が血頭の取り分になる。
 血液提供者はSNSなどを通じて集められ、患者の友人という形を装う。血頭は度々摘発されているが、「今はどこも血液不足で、手術を受けるには患者自ら用意する必要がある。家族や友人が提供できないなら、俺たちを通じて買うしかない」と男は悪びれない。

◆献血量は3分の1に

 中国では1990年代半ばまでは、輸血用血液の不足を貧しい農民らの「売血」で補うことが一般的だった。だが採血に使う注射針の使い回しなどがエイズウイルス(HIV)感染の温床となり社会問題化。98年施行の献血法で売血は禁止され、輸血用血液は無償献血で用意することになり、適正化に向かった。
 中国の献血制度は赤十字組織などが主導し、繁華街や大学、企業などに献血車を派遣し行ってきた。ここ数年は供給が安定していたが、今年1月に新型コロナの流行が始まって以来、献血活動が困難になり献血量が激減。北京での1月下旬~3月上旬の献血量が例年の3分の1になるなど各地で血液量が逼迫する。
 新規感染者が減少し、繁華街などでの献血は再開され始めたが、北京赤十字センターの担当者は「まだまったく足りない。緊急性が非常に高い重症患者の手術の分だけだ」と話す。

◆雇用悪化「困り果てて血液売った」

 一方で、新型コロナによる急激な景気の落ち込みで雇用情勢が悪化していることが、売血という悪習の復活を後押ししている。
 求人情報をやりとりするSNSでは、日雇い仕事の募集情報に並び、「血液提供者募集 18~50歳」といった書き込みが連絡先とともに掲載されている。
 自身も売血をきっかけに違法売血に加わったという別の血頭の男は、本紙に「先月まったく仕事がなくて、困り果てて血液を売った」と明かした。男は1日2人程度の血液提供者に売血先を紹介しているという。
 雇用情勢の悪化は、特に農村からの出稼ぎ労働者の職を奪った。「俺のように、定職を失い日雇い仕事で食いつなぐ人間は多い。運良く仕事が見つかっても1日の稼ぎは100~200元。楽して1回500元が稼げる売血は魅力的だ」と話した。

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