「つながり」なく苦境 児童養護施設出身の若者 雇用悪化も家族に頼れず

2020年7月27日 06時00分
ブリッジフォースマイルからの食料を受け取る児童養護施設出身の若者(手前)

ブリッジフォースマイルからの食料を受け取る児童養護施設出身の若者(手前)

  • ブリッジフォースマイルからの食料を受け取る児童養護施設出身の若者(手前)
 家庭での虐待などで児童養護施設で育ち、施設を出て暮らす若者たちが、新型コロナウイルスの影響を受け、生活が苦しい状況に陥っている。雇用環境の悪化に加え、家族に頼ることができないからだ。市民団体では、施設出身の若者を支援する取り組みも始まっている。(砂上麻子)
 「コロナの影響がここまで続くとは思わなかった」。東京都内の専門学校に通う女性(19)は嘆く。
 女性は今年4月、幼少のころから暮らした施設を出て、1人暮らしを始めた。高校時代にはアルバイトで月10万円の収入があり、貯金もできた。施設を出てもアルバイトをすれば暮らしていけると思っていた。
 しかし、間もなく発令された緊急事態宣言で生活は急変。アルバイト先の飲食店は臨時休業し、バイト代は月2万円に。家賃を含めた生活費は毎月約6万円かかり、生活費を抑えるため食費を削り、貯金も切り崩している。学費は奨学金を受けているが、返済が待っている。「バイトがないので収入は減る一方。貯金もできないので、将来が不安になる」と話す。
 児童養護施設で暮らす子どもは現在、全国で約2万7000人。原則18歳になると施設を出て、就職や進学で自立を求められる。しかし、慣れない1人暮らしで、非正規など不安定な雇用条件で働く場合が多い上に、家族や親族を頼れず、社会的影響を受けやすい。
 施設出身者を支援しているNPO法人「ブリッジフォースマイル(B4S)」(東京都千代田区)が今年4月、18~34歳の施設出身者を対象にした調査では、69人の回答者のうち35%(24人)が、3月に比べて収入が減少する見通しだと回答し、新型コロナで生活が困窮している実態が明らかになった。
 同法人は4月末から家賃補助や食料品の緊急支援を実施。これまでに195人を支援した。
 「東京ボランティア・市民活動センター」(同新宿区)と全国児童養護施設協議会は、出身者にマスクなどの生活用品を送る施設を支援する「アウトリーチ(積極的な支援)・プロジェクト」を始めた。施設が出身者の現状を把握し、つながりを強化するのが狙い。
 新型コロナにより施設出身者の生活が苦しくなっていることについて、武蔵野大講師の永野咲さん(児童福祉)は「退所後も相談できるアフターケアの仕組みを充実させる必要がある。自治体は、支援情報が伝わるようにSNSの活用など情報発信の仕方を考えてほしい」と支援体制の充実を求める。

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