国家安全維持法恐れ自主規制も どうなる香港の報道の自由 <メディアと世界>

2020年7月27日 06時00分

「読者の期待に応え、政府に厳しく対峙するうちの方針を続ける」と語る羅偉光・リンゴ日報総編集=香港で

 言論の自由を制限する「香港国家安全維持法」(国安法)が施行され、香港メディアは報道の自由を失う瀬戸際に立たされている。これまで政府と対立する報道に果敢に取り組んできたメディアも、国安法で処罰される可能性があり、自主規制を危惧する声が上がる。当局に批判的な姿勢で知られる香港紙・リンゴ日報の編集幹部と記者にインターネット動画を通じ、受け止めを聞いた。 (北京・坪井千隼)

◆あいまい規定でかえって不安に

 「記事を書くときに国安法に違反していないか、考えるようになった。うちは当局と激しく対立しているので、ターゲットになることを心配する同僚もいる」。同紙記者、りんそう氏(33)は不安そうに語る。
 行政の不祥事を追及する調査報道などを担当してきた林氏。「国安法の一番やっかいなところは、禁止行為を明確にしておらず、あいまいなところだ。地雷を踏まないよう記者が萎縮してしまう。香港の報道の自由はどんどん縮まっていく恐れがある」と懸念する。
 取材方法にも影響が。警察の盗聴リスクが高まり、「取材先との敏感なやりとりは電話を使わず、安全な欧米のアプリを使うようになった」という。
 国安法施行で香港は、市民の人権が守られない「危険な状態になった」と危惧するが、「今のような状況だからこそ、メディアという抑止力が必要だ。自分は今まで通り報道すべきことを報じていく」と、林氏は決意を話す。

◆記者逮捕に備え弁護士を準備

 同紙の総編集(編集長)、こう氏(46)は施行を受け記者の安全確保を最優先していると話す。「記者の逮捕に備え、2人の弁護士を緊急相談先として確保し、記者たちに弁護士の連絡先を伝えた」。香港警察はフェイスブックを通じ、リンゴ日報を「偏っている」と非難している。このため、取材活動で記者が拘束されるリスクを警戒する。
 昨年9月には反政府デモを取材していた女性記者が、黒ずくめの男たちに襲われ、負傷する事件もあった。国安法を恐れ辞職した記者は今のところいないが、一部のコラム作家は同紙への掲載をやめたという。

◆市民からは激励多数

 一方で香港市民からは「政府を批判する報道姿勢を続けて」と、激励の声が多数寄せられ、ネット記事の有料読者が数万人増えたという。「政府に厳しく対峙するのがうちの方針。香港人は私たちの報道を必要としている」と羅氏。「ここは中国大陸ではなく、言論の自由がある香港だ。今の方針を続ける」と語った。

 リンゴ日報(アップルデーリー) 1995年に創刊された香港の日刊紙。ネット版の有料読者約60万人、発行部数約10万部。自由主義を掲げ、中国政府や香港政府への厳しい論調で知られ、中国本土では発行が禁じられている。民主派やデモ隊を支持する姿勢を打ち出し、親中派から非難や攻撃を受けることもある。今年2月と4月には、昨年の反政府デモに関与した容疑で創業者の黎智英(れい・ちえい)氏が逮捕されている。 

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