生産性で優劣決める社会を変えたい 植松死刑囚の裁判傍聴、障害児の父親願う

2020年7月27日 06時00分
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害された事件から4年となった今も、事件は終わっていないと感じている人々がいる。重い障害のある長男土屋荘真そうま君(6つ)の父親の義生よしおさん(40)=横浜市戸塚区=もその1人だ。植松聖死刑囚の裁判員裁判を傍聴し「金を稼げるなど、生産性で優劣を決める社会が変わらなければ、生きづらさを抱える人の鬱憤うっぷんの矛先が、障害者のような立場の弱い人に向くことは再び起こり得る」と危機感を抱く。

◆事件から4年

自宅で長男の荘真君(下)を抱く土屋義生さん

 荘真君は生後2週間で髄膜炎を発症し、脳に重い障害を負った。気管切開した首には人工呼吸器がつながれている。歩くことも、話すことも、自力で呼吸することもできない。
 事件が起きたのは荘真君が2歳の時。「障害者は不幸しか作らない」という植松死刑囚の考え方もショックだったが、いつも自分たちを支えてくれる側だった福祉施設の職員が起こしたという事実がつらかった。
 家族にとって荘真君は不幸どころか安らぎを与えてくれる存在だ。でも、多くの公的支援を受けていることに義生さんは負い目を感じていた。「社会の中で息子の生きる意味は何だろうか」。答えを探ろうと、今年1~3月、横浜地裁で開かれた植松死刑囚の裁判を、荘真君と4度傍聴した。

◆死刑囚と自分重ねる

 最初に感じたのは、植松死刑囚による障害者への「憎悪」。しかし、被告人質問で「歌手とか野球選手になれるなら事件は起こしていない」と話す姿を見て、かつての自分を思い出した。
 義生さんは昨年3月、公務員の仕事を辞めて専業主夫になった。荘真君のために決めたことだが、目標を失い「俺の人生って…」と少し絶望したという。誰かに認めてほしくて体を鍛えたり、資格をとろうとしたりした。「平凡な自分を受け入れられずに、とっぴな行動で人に認めてもらいたかったのでは」。義生さんは、植松死刑囚と自身が重なったという。

◆息子が生きやすい社会に

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性の依頼で薬物を投与し殺害したとして、医師2人が嘱託殺人容疑で京都府警に逮捕された。「女性の考えは尊重されるべきだ。ただ、障害があることによって女性に『生きる価値がない』と思わせてしまう社会の空気があるのは確かだろう」と問題の根深さに心を痛める。
 荘真君は4月、横浜市内の特別支援学校に入学した。学校に通っても話せるようになったり、歩けるようになる見込みはない。それでも同級生らと触れ合い、表情が明るくなっている。
 「生産性で人の価値を測る今の風潮で、誰しもが生きづらさを抱えているのではないか。荘真のような何もできない子が受け入れられる社会は、きっとみんなが生きやすくなるはず」。義生さんはあるがままに、荘真君と生きていこうと決めた。(土屋晴康)

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