足立の印刷会社×製本業 2代目が発案 「本のみみ」に夢描く

2020年7月27日 07時34分

製本で出る残紙でノートやメモ帳を作った印刷業の丸山有子さん(左)と製本業の安田典子さん=いずれも足立区で

 揚げ菓子にすればおいしく食べられる「パンの耳」のように、製本時に捨てられる「残紙」が新しい製品に生まれ変わった。それが、足立区の製本業者と印刷会社が立ち上げたノートのブランド「本のみみ」。衰退する家業を盛り上げようと、ともに家業を継いだ2代目の女性同士がタッグを組んだ。

ゾウのロゴを表紙にあしらったノートとメモ帳。会社のロゴなどを入れてオリジナルのノートをつくれる

 「これで四万枚ほどですかね」。区役所にほど近い「菅原製本所」の安田典子さん(51)が、工場の片隅に積まれた紙を見つめる。学校案内やパンフレットなどの印刷物を製本する時、切り捨てられた残紙だ。切れ端とはいえ、お絵描きや工作には十分な大きさがあり、年に一回、区内の幼稚園や保育所などに無償で配布している。それでも大量に残り、廃棄するしかない。「もったいない」。大量の残紙は、安田さんの悩みの種だった。
 そんな時、ラオスの女性や子どもの支援活動を続ける区内のNPO法人 「Support for Woman’s Happiness(SWH)」の代表・石原ゆり奈さんが、イベントで販売するノートのロゴ印刷を印刷会社「安心堂」社長の丸山有子さん(48)に依頼した。
 石原さんは市販のノートとメモ帳を持参。丸山さんは「市販のものを使うなら、ノートとメモ帳からつくらせてほしい」と提案した。丸山さんの頭の中には残紙で悩んでいる安田さんが思い浮かんでいた。
 安田さんと丸山さんは製本と印刷と分野は違うが、父親が創業者で、二代目という共通点があった。数年前、都内の展示会で偶然出会い、仕事の悩みを相談するなど交流を深めてきた。

製本所の片隅に積まれた残紙

 インターネットの普及で紙媒体の需要は減少、印刷業界は冬の時代を迎えている。成長が見込めない中、二人は新しいビジネスチャンスを探していた。
 丸山さんは早速、安田さんに連絡。安田さんは三日後、残紙からつくった「みみノート」と「みみメモ帳」を完成させた。
 安田さんは「新しいことをしたいとずっと思っていたけど、製本業は、印刷の最終工程で何かをつくるという発想はなかった」と話す。
 本のみみ第一弾のノートとメモ帳は六月下旬、SWHのイベントで販売された。表紙にゾウのイラストが入り、約百三十冊が売れた。石原さんは「予想より売れた」と喜ぶ。
 本のみみで使用する用紙の種類は残紙の在庫によって変わる。表紙は無地で、会社のロゴなどを入れオリジナルのノートをつくれる。印刷の目印になる「トンボ」と呼ばれる独特のしるしを、デザインとして生かして使うことも考えている。
 みみノートとみみメモ帳は、SWHの物販サイト「FranMuan」で販売している。
 本のみみのホームページでは、三十冊以上から注文を受け付けている。秋からは個人向けの一般販売も始める予定。

残紙を利用して作られた「本のみみ」ブランドのノートとメモ帳。下は加工前の残紙

 丸山さんは「技術だけで生き残れる時代ではない。客がほしいものを形にできるアイデアも重要」と話す。
 詳細はインターネット「本のみみ」で検索。
 文・砂上麻子/写真・稲岡悟
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