<検証 新型コロナ>(4)エアロゾル原因か 横浜の聖マリ、県内最大の院内感染

2020年7月28日 07時15分

院内感染の状況や対応を振り返る佐野さん=いずれも横浜市旭区で

 始まりは四月二十一日、横浜市保健所からの電話だった。「そちらに入院していた患者さんが新型コロナウイルス陽性でした」。聖マリアンナ医科大横浜市西部病院(横浜市旭区)で、県内最大の院内感染が起きた。
 この患者は四月上旬、新型コロナとは別の病気の治療のため、重症患者が集中的に治療を受ける「高度治療室」に入院し、約一週間で退院していた。すぐに同時期にこの部屋にいた患者らの検査を始め、患者五人の感染が判明した。
 「それまで院内で感染が広がっているとは察知していなかった」。感染制御室長を務める佐野文明副院長は当時の衝撃を振り返る。
 事態をさらに悪くしたのは、五人のうち四人は既に一般病棟に移動していたこと。気付かないままウイルスは運ばれ、一般病棟の患者や担当医師、看護師、さらには病棟に直接出入りしない放射線技師や事務職員に広がった。市によると、感染者は三階、二階、五階の順に拡大し、合計で患者三十六人、職員四十三人。死亡者は六十〜九十代の患者十三人に上った。

6月から新規入院患者の受け入れを再開した聖マリアンナ医科大横浜市西部病院

 なぜ感染が急に拡大したか。同病院と市が原因の一つと見ているのは、ある治療だった。高度治療室から一般病棟に移った「隠れコロナ」患者が気管切開などの処置を受け、ウイルスを含んだ微粒子のエアロゾルを出していたとみている。
 当時はエアロゾルの危険性が十分に知られておらず、無症状感染者も今ほど指摘されていなかった。佐野さんは「知らないうちに感染した患者がエアロゾルの出る治療を受け、ウイルスが広まった」と話す。
 四月下旬から感染の起きた病棟を空にし、徹底的な消毒を行った。退院可能な人は退院、治療が必要な人は系列病院に転院してもらった。稼働病床四百五十床のうち、一時は三十床ほどだけにした。系列病院のある大学病院だからできた対策だが、「とにかく一度、何としても止めなければいけないと考えた」と話す。
 同病院の感染対策は決して低いレベルではない。二月にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜港に入港し、感染者を受け入れてきたが、院内感染は起きていない。「陽性患者と分かって対応すれば感染しない。新型コロナの難しさは無症状の存在と潜伏期間の長さ」と指摘する。
 最後の感染者の判明は五月二十日。始まりの電話から丸一カ月がたっていた。六月八日に終息宣言し、新規入院患者の受け入れを再開した。入院時に胸部CT撮影、PCR検査を行い、個室で健康観察期間をとるなど、隠れコロナを見つける対策を徹底的に講じている。
 「火事と同じ。小さいうちはすぐ消せるが、気付かないうちに広がると手に負えなくなる。『もしかしたら新型コロナじゃないか』という目を患者にも職員にも常に向ける必要がある」と佐野さん。「いかに早く発見し、隔離するか。その取り組みを日々やっていくしかない」
<エアロゾル> 日本エアロゾル学会は「気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体」と定義。せきやくしゃみなどで出る飛沫(ひまつ)より細かく、空気中を漂いやすい。新型コロナの感染経路の一つとして可能性が指摘されている。

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