「出火吐暴威」。学校の漢字の試験にはまず出題されないだろう…

2020年7月28日 08時22分
 「出火吐暴威」。学校の漢字の試験にはまず出題されないだろう。これで「デビッド・ボウイ」と読む。英国の伝説的ロックスターである▼世界的ファッションデザイナーの山本寛斎さんが亡くなった。七十六歳。ロックファンならボウイのステージ衣装を担当したことを思い出すか。「出火吐暴威」の漢字は山本さんが考え、一九七三年のツアーでボウイが身にまとった白いケープにあしらった。漢字のかっこよさを世界に広めた一人かもしれない▼袴(はかま)のようなジャンプスーツや和柄。ショーでは歌舞伎の衣装替えの「引抜(ひきぬ)き」も使った。「異端」「奇抜」「革命的」−。そう評される山本さんの作品だが裏側から支えていたのは日本の伝統文化なのだろう。それが当時の欧米を驚かせ揺さぶった▼夕暮れ時の風景が苦手だったそうだ。一時暮らした児童施設から脱走を図ったが、訪ねた先の親戚に追い返されてしまう。その時、列車の中から見た夕暮れの寂しい色▼自分が「きれいで明るくて元気いっぱいの世界」を作りだそうとするのは「あの寂しい風景から逃れるためかもしれない」と書いている▼「だれも見たことのないもの。そんな服を作りたかった」。奇妙、奇天烈(きてれつ)に見えることをおそれず、絶えず新しさを追い求めた。「出火吐暴威」。その生き方を思うとあの漢字が「カンサイ・ヤマモト」と読める気もしてくる。

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