八王子スーパー強盗殺人から25年 同級生の牧師が語る「私の使命」

2020年7月28日 10時50分
 東京都八王子市のスーパーで1995年7月、女性3人が射殺された強盗殺人事件で、アルバイト中に事件に巻き込まれた矢吹恵さん=当時(17)=が通っていた私立桜美林高校(町田市)では、1人の牧師が事件の記憶と命の尊さを語り継ぐ活動を続けている。当時高校2年だった矢吹さんの同級生でただ1人、同校の教員を務める木村智次さん(42)。発生から25年を前に「事件解決まで語り続けるのが私の使命です」と語る。(奥村圭吾)

「与えられた命に感謝して生きてほしい」と語る桜美林中学・高校の教員で牧師の木村智次さん=東京都町田市の桜美林中学・高校のチャペルで

◆犠牲になったのは同級生だった

 「女高生ら3人射殺」。事件の翌朝、新聞の見出しが目に飛び込んできた。1年で隣のクラスにいた矢吹さんが犠牲になったショックは「今も忘れられない」と振り返る。
 木村さんは事件の衝撃を受けたまま、大学1年のとき、小学校時代の恩師の死をきっかけに教会に通い、2008年に桜美林教会の牧師になった。
 ある日、友人の誘いで、矢吹さんの親友らでつくる「銃器根絶を考える会」が母校の文化祭で開いているパネル展に足を運んだ。その際に「矢吹さんの死を無駄にしたくない」と、懸命に活動を続ける友人らの姿に心を打たれた。

◆母校の後輩たちに伝えたい

 15年に母校の聖書科の教員になったのを機に、自分にできることは何かと考えた。中高一貫校の全校生徒約1700人が、礼拝か授業のどちらかで年に1度は事件を振り返り、自分の命と向き合う機会をつくるようにした。
 同校のチャペルで行われる礼拝では、遺族の「元気でいてさえくれれば、それだけで良かった」という言葉を代弁し「命に感謝してほしい」と伝える。聖書の授業では、普段から勉強や部活が「面倒くさい」「つらい」とこぼす生徒らに寄り添い、「命は当たり前じゃない。悲しみも喜びも、生きているからこそ感じられる」と説いている。

◆生きていることはありがたい

 活動を始めて5年。初めて授業を受け持つ中学生の半数近くが「事件を知っている」と手を挙げ、礼拝や展示がきっかけになっていると知った。生徒たちは事件に触れた授業の感想文に、心のこもった丁寧な文字で「命を大切にしたい」とつづるという。
 木村さんは「矢吹さんの後輩たちに直接語りかけるのは、私の大切な役割」と使命感を語る。「生きていることのありがたさが、生徒たちの心の中や内面に自然と残ってくれればいい。それが、事件の風化をなくすことにもつながるはずだ」。亡き同級生への思いを胸に、これからも活動を続ける。

八王子スーパー強盗殺人事件 1995年7月30日夜、東京都八王子市大和田町4のスーパー「ナンペイ大和田店」の2階事務所で、いずれもアルバイトの高校2年矢吹恵さん=当時(17)、前田寛美さん=同(16)、パート従業員の稲垣則子さん=同(47)=の3人が頭を拳銃で撃たれて殺害された。事務所の金庫の扉にも弾痕があり、こじ開けようとした形跡があったが、中の現金約500万円は残されたままだった。事件は未解決となっており、警視庁捜査1課のコールドケース(長期未解決事件)の専従捜査班が強盗と怨恨(えんこん)の両面で捜査している。情報提供は八王子署捜査本部=電042(621)0110=へ。

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