改正社会福祉法、来春施行 相談たらい回し解消へ 「断らない窓口」孤立防ぐ

2020年7月29日 07時19分
 高齢者、障害、子育て、生活困窮など分野で縦割りとなり、相談時に「たらい回し」されることもある福祉行政を変えようと、改正社会福祉法が来年4月に施行される。目玉は、どんな相談もワンストップで受ける「断らない」窓口の設置と、継続して寄り添う伴走型支援。市町村の任意事業だが、国は交付金を新設して後押しする方針だ。4年前、ワンストップ窓口を先駆けて設けた茨城県東海村の実践から意義や課題を考える。 (五十住和樹)
 「同居の五十代の息子について相談したい」
 二〇一八年、七十代の母親が民生委員に付き添われ、同村が一六年に社会福祉協議会に設けた総合相談窓口(ワンストップ窓口)を訪れた。世帯の収入は母親の年金だけ。息子は精神疾患があり、食事など日常生活や金銭管理は母親頼り。「自分が亡き後、無職の息子はどうしたらいいのか」という相談だった。
 対応した村社協のコミュニティーソーシャルワーカー(CSW)は、村障がい福祉課に連絡してグループホーム入所や就労支援などの検討を始めた。ところが一カ月後、母親が急死。CSWは息子に付き添って生活保護を申請し、自宅で暮らし続けたいとの息子の希望から、食事や洗濯など障害福祉の家事支援サービスを始めた。認知症や知的障害などがある人向けの「日常生活自立支援事業」による金銭管理も実施。よく買い物をするコンビニに見守りなどを頼み、息子は今も各種の福祉に支えられ暮らす。
 村社協の社会福祉士でこの仕組み作りを担当した古市こずえさん(39)は「生活保護や障害福祉など、それぞれの窓口に本人が行かないと始まらない旧来の態勢では、母が急死しても息子がSOSを出せず、遺体と暮らすような最悪の事態も考えられた」と振り返る。
 「どこの窓口が受けるか微妙な相談や『助けて』と言えない人への支援は課題だった」と古市さん。総合相談窓口は分野を問わず相談を受ける「相談支援包括化推進員」ら七人で担当。平日は毎日開き、相談者の自宅へ出向くこともある。
 村社協への相談件数は一五年度は六十六件だったが、総合相談窓口ができた一六年度は百五十八件に急増。「雨戸がずっと閉まった家がある」「あの家のおばあちゃんが心配」など、村などに寄せられた住民からの情報が総合窓口を通じて福祉サービスにつながった例もある。ひきこもりなど、本人や家族が相談に訪れにくいようなケースは、こちらからアプローチすることもある。
 もう一つの柱は総合相談窓口と連携する、村社協の地域づくり専門員「支え合いコーディネーター」だ。各地区から出た困り事を、商工業者や行政など多分野のメンバーが集う話し合いの場「絆まるっとプロジェクト」で検討。既存のサービスがなければ新しい仕組みを作って解決に導く。これまでに、ごみ屋敷対策などの新事業が生まれた。
 村社協はこれらの活動を始めるに当たり一六年、寄付を募って基金を設立。行政が対応できない部分などを補っている。
 改正法では、東海村のようなワンストップの取り組みを支援。生活困難に陥る要因の一つである社会的孤立にある人へ支援を届けることも明記した。
 国の検討会に参加した、千葉県市川市の「中核地域生活支援センターがじゅまる」センター長、朝比奈ミカさん(55)は「複雑さも深刻さも違う一人一人にオーダーメードの支援をチームを組んで行う。まずは仕組みをスタートさせ、やりながら点検していきたい。国が資金を出して、支援を行う自治体を支えることが重要だ」と話している。

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